Sidsel Endresen は 1980sからノルウェーの jazz/improv の文脈で活動してきている 女性歌手。 そのスタイルをSSW 的なものから voice improv 的なものへ変化させてきている。 そんな彼女が、ex-Atomic で Wibutee での活動で知られる reeds 奏者 Håkon Kornstad とのデュオで来日した。 静謐な音のテクスチャを生かした improv ながら、メロディもささやかに響かせるようなライブが楽しめた。 前半はそれぞれのソロを Endresen、Kornstad の順で、後半とアンコールは duo だった。
Endresen のソロは、一曲で kalimba を爪弾きながらだった以外は、自身の声のみ。 Sidsel Endresen / Christian Wallumrød / Helge Sten: Merriwinkle (Jazzland, 2003) から electronics を抜いたようなパフォーマンスを聴かせた。 (自分の気付いた限りでは、実際、所収の “Ordenwold” を歌っていた。) ひび割れたような音色を強調した声で、抽象的な声の曲から、 少しずつ言葉が浮かび上がってくるような歌へ進んでいくようだった。
しかし、印象に残ったのは Kornstad の方。 2007年に観たライブの印象もあってアコーステックで演るのかと予想していたのだが、loop を駆使したもの。 それも、リードが弾けるような音やパッドを開閉する音でリズムを刻んでいく所は、CD以上にグルーヴを感じるものだった。 ソロでは中東〜バルカン風にも感じる節回しの曲を2曲、tenor と flutenette (flute に clarinet のマウスピースを付けたもの) で。 といっても、ソロの最後にやった南アフリカの kwela を思わせるような旋律の “Sweden” (Single Engine (Jazzland, 2007) 所収) の、 低音をちゃんと響かせる一方で主旋律をわざとかすれさすような吹き方が、聴いていてツボにはまった。
デュオは、そんな2人の音世界が自然に合わさった感じのもので、Endresen はソロの時よりも歌を感じさせた。 Endresen をフィーチャーした Nils Petter Molvær の曲 “Merciful” (Solid Ether (ECM, 2000) 所収) を歌ったりもし、 前半よりもぐっと掴みを感じるパフォーマンスに感じられた。