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Review: Michiyo Yagi with Håkon Kornstad (live) @ Mary Jane, Shibuya, Tokyo
2007/12/04
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
メアリージェーン, 渋谷
2007/12/02, 19:00-21:00
八木 美知依 (Michiyo Yagi) (箏 (koto), vocals), Håkon Kornstad (tenor saxophone, flutenette).

contemporary classical (現代音楽) や jazz/improv の文脈での活動も盛んな箏奏者 八木 美知依 の、 ゲストとして Wibutee などの Jazzland レーベル界隈で活動する ノルウェー (Norway) の saxophone 奏者 Håkon Kornstad を迎えてのライブが、 渋谷のジャズ喫茶メアリージェーンであった。 今までのライブで受けていた印象とはちょっと違った 小さなハコならではのアコースティックな音の響きも楽しめるライブだった。

前半は 八木 のソロ。アコースティックな十二絃箏と二十絃箏を用い、 現代箏曲 (沢井 忠夫 「鳥のように」)、 古典 (「千鳥の曲」)、自作曲 (おそらく。タイトル不明) の3曲を演奏した。 古典を聴く機会がほとんど無いこともあるのか、 普段、弓や撥も駆使して音を鳴らし続ける演奏をよく見ているせいか、 複数弦を一度に弾くことがあまりなく一つ一つの響きのニュアンスまで聴かせるような 「千鳥の曲」がとても新鮮に聴かれた。 最後の歌入りの曲も以前に SuperDeluxe のライブだかで聞いたことがあるような気がする曲だったが、 浮遊するかのようか歌唱もアコースティックな弾き語りのようにも感じられて、 変に音を弄ったりPA噛ませたりしない方が良いと感じられた。

後半は Kornstad との duo。Kornstad は当日の昼前に日本に着いたばかり、 リハーサル無しでの即興を3曲やった。 こちらでは、八木は electric な十七絃箏を使いアルコや撥も使った演奏を聴かせた。 一方、Kornstad は tenor saxophone をメインに、 1曲では flute 縦方向に double reed のマウスピースを付けた "flutenette" に 持ち替えての演奏を聴かせた。 Kornstad は、パルス状に強くタンギングするような音でリズムを刻むようだったり、 抽象的なフレーズを吹くだけでなく、 jazz 的なイデオムを感じさせるフレーズを吹いたりもした。 Kornstad があまり強く吹きまくるような演奏ではなかったこともあるのか、 小さいハコですぐ目の前で音を出す様子が見えるせいか、 撥や弓を使っても個々の音の中にニュアンスを含ませるように演奏しているような感じられた。 10月の Flaten & Nilssen-Love とのライブは (レビュー) 厚く音のテクスチャを織り上げていくようだったが、 今回は粗目に様々なタッチの線や点で描いていくような演奏に感じられた。 ブルースを感じさせるフレーズに対して、 低音の響を持続させながら少し高音を織りまぜるような箏で応じた展開など、気に入った (Archie Shepp, Blazé あたりを少し連想した)。

Peter Brötzmann や Paal Nilssen-Love との共演での 激しく弾きまくる演奏の印象がどうしても強いのだが、 今回のライブの演奏の方が今の自分の嗜好には合っているかもしれない、 とも思った。

ちなみに、Håkon KornstadHåvard Wiik との Kornstad-Wiik duos/solos として来日、 12月3日、4日に新宿 Pit Inn でライブを行い、3日にはゲストとして 八木 が出演した。 残念ながら観に行かれなかったが。