1990年代半ばから活動する Food は ノルウェーの Thomas Strønen (Humcrush, etc) と イギリスの Iain Ballamy (ex-Loose Tubes, ex-Bill Bruford's Earthworks) のグループ。 その6作目は、前3作をリリースしていたレーベル Rune Grammofon からではなく、ECM からのリリースだ。 前作 Molecular Gastronomie (Rune Grammofon, RCD2069, 2007, CD) 同様 Strønen - Ballamy duo にゲストを迎える編成で、 今回のゲストはノルウェーの nu jazz のパイオニア Nils Petter Molvær と、 electronica の文脈で活動するオーストリアの Christian Fennesz。 ECM の音作りに electronica な処理がマッチした佳作だ。
Quiet Inlet で耳を捉えたのは Fennesz が参加した曲。 無機的でシャープな Fennesz の guitar/electronics の音が Rainbow studio 録音の透明感ある ECM の音にマッチしている。 ゆったり浮遊する Ballamy の saxophone のフレーズと 鋭く細く刻む Strønen や Fennesz の電子音が、 クリアな空間の中に奥行きを作り出しているようで、とても良い。 “Mictyris” では控えめに響く guitar の歪んだ音も効果的だ。 前作 Molecular Gastronomy (Rune Grammofon, RCD2067, 2007, CD) でも Ashley Slater (ex-Loose Tubes, ex-Freak Power) が参加した曲が3曲あったが、 その鈍く重め break とは対称的だ (そちらもそれで悪くは無かったが)。
もちろん、Molvær が参加した曲も悪く無い。 Arve Henriksen (trumpet) が参加していた2000年代半ばまで Food を思い出させる、 抽象的になる寸前でメロディアスにゆったりと漂う saxophone と trumpet の音が織りなす 音空間が楽しめる。