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Review: Paul Frick feat. Emika: I Mean; MyMy & Emika: Price Tag
2011/03/06
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
Paul Frick feat. Emika
I Mean
(Doppelschall, DPS006, 2011, 12″/DL)
1)I Mean 2)I Mean (Dollkraut’s Band Reinterpretation) 3)I Mean (Akufen Remix) 4)I Mean (Instrumental Version) 5)I Mean (Finchhatten Remix)

minimal techno を生演奏する trio Brandt Brauer Frick の1人であり、 ソロとしても2007年以降 Kalk Pets (Karaoke Kalk の12″専門サブレーベル) から2枚のリリースがある ベルリンのDJ/producer Paul Frick のニュー・シングルは、 イギリス出身ながらベルリンを拠点に活動する女性歌手/DJ/producer Emika をフィチャーしたもの。

Do Something (Kalk Pets, #12, 2007, 12″/DL) と Knock On Wood (Kalk Pets, #15, 2008, 12″/DL) では 生演奏的な楽器音 (特に後者では xylophone の音) の音使いが印象的な Paul Frick だが、 この “I Mean” はより無機質な音。むしろ、Emika がコンセプト立案した Fünf (Ostgut Ton, OSTGUTCD15, 2010, 2CD) [レビュー] を連想させられる。 そんなトラックに、サラリとクールな呟きでありながら ふと見せる抑揚の中に艶かしさを感じさせる歌声を Emika は載せる。 その取り合わせが良い。

リミックスは、 ベタな house に仕上げたモントリオールの Akufen (Marc Leclair)、 hard techno に強化したベルリンの Finchhatten (Peter Hintze) よりも、 lounge 的にも感じるレトロな guitar をフィーチャーしたアムステルダムの Dollkraut (Pascal Pinkert) の「再解釈」が耳と捉える。 しかし、リミックスはオリジナルを越えていないようにも感じた。

リリースの Doppelschell はケルンを拠点とするレーベル (配給はオランダの Clone だが)。 まだリリースは多くないが、 Brandt Brauer Frick や Paul Frick、Scott (Jan Brauer and Daniel Brandt) をリリースしている他、Paul Frick のキュレーションのサブレーベル The Gym を持つなど、 Brandt Brauer Frick の活動拠点となっている。今後の活動に注目したい。

MyMy & Emika
Price Tag
(Aus Music, AUS0924, 2009, 12″/DL)
1)Price Tag 2)Lights Go Down 3)Price Tag (Appleblim & Komonazmuk Remix) 4)Price Tag (Sideshow Dub)

1年半程前にリリースされた Emika のデビュー作とも言える ベルリンの MyMy (Lee Jones & Nick Höppner) との共作は、 Emika の呟きやため息のような声が漂うソフトな音色の軽快な tech house だ。 Appleblim & Komonazmuk によるリミックスも dubstep 風味ながら、 techno 的なビート感も残している。

その後、Emika は自身の名義で Ninja Tune から2枚のシングルをリリースしている。 Scuba のリミックスを収録した Drop The Other (Ninja Tune, ZENDNLS240, 2010, DL)、 Pinch のリミックスを収録した Double Edge (Ninja Tune, ZENDNLS262, 2010, DL) も post-dubstep な trip hop とでもいう音だ。 しかし、I MeanPrice Tag で聴かれるような 軽快な tech house に彼女の歌声を載せたもの方が、良いように思う。

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