Vladislav Delay こと Sasu Ripatti はフィンランド (Finland) 出身。 deep house/techno のDJ/producer として Luomo 名義等でベルリン (Berlin) のシーンに深くコミットする一方、 最近は drums 奏者として live electronics を駆使した jazz/improv に近い活動もしている。 この Vladislav Delay Quartet は後者のプロジェクトの一つ、 同郷フィンランド出身で Pan Sonic のメンバーとして知られる Mika Vainio、 ベルリンの jazz/improv シーンで主に活動する Lucio Capece と Derek Shirley との4tetだ。
演奏は、今年前半にリリースされたアルバム Vladislav Delay Quartet (Honest Jon's Records, 2011) からの曲を中心に約1時間。 判り易いメロディやビートの無いノイジーな電子音に saxophone らが絡む即興的な演奏、 といっても、CDで聞き覚えがある曲と判る位には構成はされている。 CD/DL音源を家や携帯プレーヤーで聴くのとは違い、木目細かい音のテクスチャと立体感が楽しめたライブだった。
特に良かったのは、やはり、リーダーの Sasu Ripatti の drums。 live electronics でリバーブ風の空間的な音処理を強くかけて、 drums から音が出ているように感じられなくなるような時も。 よく live でここまで弄れると感心する程の不思議な drums を堪能した。 一方で、Ripatti の動きが見えることもあるのか、 CDで聴いている時よりもリズムを感じることができたのも確かだ。
もちろん、残りの3人の演奏も、Rapatti の音に合っていた。 特に、単に吹き捲くるのではなく、 30cm の管を saxophone/clarinet のベルに立てて管の上下からマイクで音を拾ったり、 ベルの上に蓋状のものを被せてその上で鉄球をガラガラと転がした音をベルに反響させて音を出したり、 という、プリペアドに近い細工のされたミュートを駆使した Capece の演奏を楽しんだ。
ちなみに、このライブは、Mika Vainio の solo、Luomo のDJと合わせての オールナイトのイベントとして行われた。 翌日午前に予定があったので徹夜というわけにもいかず、 最初の Vladislav Delay Quartet のライブだけ観て帰った。 しかし、オールナイトのスタンディングのイベントということで若干腰が引けていたのだけど、 一番の目当てのライブが観られて、行った甲斐があった。 しかし、Vladislav Delay Quartet のライブが良かっただけに、 Vladislav Delay も参加している Moritz von Oswald Trio のライブも、 オールナイトのスタンディングだと敬遠せずに観に行けばよかったと、少々後悔。
ライブの後に改めて家でアルバムを聴き直すと、ライブでの印象の助けもあってか、 それまで掴み辛いべたっとしたノイズに近く聴こえていた所に具体的な音像が浮かんで見えてくるよう。 ライブ前までは、Moritz von Oswald Trio と比べても掴みに欠けると思っていたが、 こうして聴き直すと、良いアルバムだったなと思う。