1960年代から contemporary classical の文脈で活動するイタリア (Italia) の作曲家 Salvatore Sciarrino のコンサート。 100本とフルートと100本のサクソフォンを使った曲がどんなものなのか、という興味で観に行ったのだが、 オーケストラを一つの楽器として使うような面白さも感じたコンサートだった。
といっても、最も興味深く聴かれたのはやはり、休憩後の後半に演奏された “Studi per l'intonazione del mare con voce, quattro flauti, quattro sassofoni, percussione, orchestra di cento flauti, orchestra di cento sax”。 flute と saxophone 合わせて200人が舞台に乗る様子は予想したよりはみっしり感は無かったけれども、その音は期待以上に面白かった。 音量をかせぐために人数を動員しているというより、 ぱたぱたいうバッドの音やかすれたような微かな音、弾くようなタンギング音など、 本来での演奏ではノイズの部分になるような音 (多くの場合は微かな音) を100本分集めて、 独特な音響にしていた。 個々の楽器の音という意味では、自分が良く聴いている jazz/improv で文脈での演奏でそれなりに聴く機会があるものだけれども、 それを100本分も束ねると違った音に聴こえる、というのが面白かった。 もはや、100人がかりで演奏するフルート (もしくはサクソフォン) 100本からなる楽器だ。 フルートとサックスあわせて200本のパットの響きで驟雨の響きを作り出した瞬間がこの曲のハイライトだったとは思うが、 自分が最も引き込まれたのは フルートのとても微かな響きを集めてシャラシャラシャラと軽く明るく煌めくような響きを作りだした時だった。
オーケストラが一つの楽器のよう、というのは、前半の曲でも感じるときがあった。 特に印象に残ったのは、2曲目の “Libro notturno delle voci per flauto e orchestra”。 フルートのソロをフィーチャーしたオーケストラ物というより、 jazz/improv の文脈でのフルートとピアノのデュオのピアノをオーケストラに置き換えたよう。 ピアノにおいてグリッサンドしたり内部奏法で複数の弦を撫でるように鳴らしたりするかのように オーケストラを鳴らしているように感じられた。そして、そんな音が面白かった。
ちなみに、このコンサートは、アニュアルの東京オペラシティの「同時代音楽」 (contemporary classical) 企画「コンポージアム」の一環として企画されたもの。 「コンポージアム」の管弦楽曲作曲コンテスト「武満徹作曲賞」の2011年の審査員が Sciarrino だった。 当初は2011年5月に予定されていたのだが、東日本大震災のため延期されていた。