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Review: Erdal Ercinzan / Kayhan Kalhor: Tahran Konseri [Live In Tehran] (DVD); Kayhan Kalhor / Erdal Ercinzan: The Wind; Erdal Ercinzan: Girdab-ı Mihnet
2012/07/16
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
Erdal Ercinzan / Kayhan Kalhor
Tahran Konseri [Live In Tehran]
(Kalan, DVD010, 2012, DVD[PAL/2])
I)Erdal Erzincan solo: 1)Felek Senin Elinden 2)Sinsin Halayı 3)Çeke Çeke II)Erdal Erzincan & Kayhan Kalhor: 1)Allı Turnam 2)Deli Derviş 3)Daldalan Barı 4)Kula Kulluk Yakışır Mı 5)Rüzgar 6)Sivas Halayı 7)Mevlam Dirçok Dert Vermiş 8)Gol Nishan 9)Erik Dalı Gevrektir III)Röportaj
This concert was held at Tehran's Vahdat Hall in Iran in 2010.
Erdal Erzincan (bağlama), Kayhan Kalhor (kamancheh).

Erdal Erzincan トルコ東アナトリア地方エルズルム (Erzurum, TR) 出身の bağlama (saz としても知られる東地中海で広く使われている3コース6弦の撥弦楽器) 奏者。 2000年代半ば頃から、欧米でも活動している [関連レビュー]。 クルド系イラン人 kamancheh (中東で広く使われている4弦の擦弦楽器) 奏者 Kayhan Kalhor も、 Yo-Yo Ma の Silk Road Ensemble へ参加するなど、活動の中心は欧米ともいえる。 この2人は2000年代半ばから共演しており、The Wind (ECM, 2006) というリリースもある。

そんな2人によるイラン・テヘラン (Tehran, IR) でのライブを収録したDVDがリリースされた。 前半約20分に Erzincan のソロ、後半約70分に Kalhor と Erzincan のデュオでのライブが収録されている。 また5分ほどの “Röportaj” ではリハーサルの様子などを収録している。 ライブでは、自作の曲もあるが、ほとんどがイランやトルコの伝承の曲を演奏している。 座っての淡々とした演奏で動きのあるステージではないが、手元のクローズアップ映像が多用されている。

前半、Erdal Erzincan のソロは、歌いながらの、şelpe という bağlama の指弾き。 ピックを使わずシャランシャランと指で弦を払うような弾き方は知っていたけれども、 見所は、時折見せる tapping guitar のように両手でネックをタップして繊細なフレーズを繰り出すところだろうか。

Kalhor とのデュオでは、Erzincan は歌わず、şelpe だけでなくピックを使った普通の bağlama の指弾きもしている。 2人で白熱の演奏というより、Kalhor がソロを取っているときは Erzincan がピック弾きで軽く音を添え、 Erzincan がソロを取っているときは Kalhor が緩く通奏低音で下支えする、という感じだろうか。 終わり近く60分の前後のピチカートというかタッピングも交える Kalhor の kamancheh ソロのあたりが、 一番盛り上がるところだろう。

その端正な演奏も良いのだけれど、普段観る機会のあまり無い bağlama や kamancheh の演奏を間近に迫るように観ることができ、 こういう弾き方をしていたのかと新鮮に楽しむことができたDVDだった。

併せて関連するCDを紹介。

Kayhan Kalhor / Erdal Ercinzan
(ECM, ECM1981, 2006, CD)
1-12)The Wind I-XII
Recorded in Istanbul, November 2004.
Kayhan Kalhor (kamancheh), Erdal Erzincan (bağlama), Ulaş Özdemir (divan bağlama).

Erzincan と Kalhor の2人によるスタジオ録音によるアルバムだ。 低音部の divan bağlama に Ulaş Özdemir も伴奏で参加しているが、 Erzincan と Kalhor の2人の演奏がメインで、歌も入っていない。 Tahran Konseri で演奏することになる曲と思われるものも演奏しているが、 このCDでは曲名クレジットがなく「ペルシャとトルコの音楽に基づく即興」とのみ書かれている。 ライヴではなくスタジオ録音ということもあると思うが、 ECM からのリリースということからも判るように、 Tahran Konseri 以上に淡々と端正に聴こえる演奏・録音だ。

Erdal Ercinzan
Girdab-ı Mihnet
(Kalan, 546, 2011, CD)
1)Giderem Van'a Doğru 2)Bülbüller Düğün Eyler 3)Ela Gözlü Şahım 4)Yaralı Mahmut 5)Hey Pir 6)Vardım Yarin Vatanına 7)Sürmeli 8)Girdab-ı Mihnet 9)Şikayetim Var 10)Kırat 11)Seher Yeli 12)Deli Gönül 13)Can Maral 14)Gözün Açık İse 15)Karadır Kaşların 16)Çıkar Yücelerden
Erdal Erzincan (bağlama).

去年 Kalan からリリースされた Erdal Erzincan のソロは、 もちろん、特に電子的なギミックのようなものはなくアコースティックな演奏だ。 演奏している曲に重なりは無いが、 Tahran Konseri で聴かせたような bağlama の弾き歌いを聴かせてくれる。 şelpe と思われる聴き方をしている曲は意外と少なめだ。 若干リバーブ深めに録音されているが、録音も良い。 洗練されたジャケットデザインといい、安心の Kalan 制作だ。