Pantha du Prince こと Hendrik Weber は2000年代以降 ドイツ・ハンブルグを拠点に活動する minimal techno/house のDJ/producer だ。 かれが、contemporary classical の文脈で活動するノルウェーの作曲家 Lars Petter Hagen と 彼の率いる carillon (釣り鐘) を中心とする打楽器アンサンブル The Bell Laboratory と組んでの生演奏 minimal プロジェクトだ (ちなみに、メンバーの一人は Jaga Jazzist の drums Martin Horntveth)。 2011年8月ノルウェー・オスロの Øyafestival で初演して以来、 ベルリン等でも公演を行い、話題になっていたものだが、ついにCDがリリースされた。 公演時の録音ではなくスタジオでの制作で、carillon はハンブルグで、 それ以外の打楽器はオスロで録音されている。 マスタリングは Basic Channel 界隈を手掛ける Rachad Becker だ。
前作 Black Noise (Rough Trade, RTRADCD544, 2010, CD) は 金属製や木製の打楽器の音やフィールド録音された物音からソフトなビートの electronica に仕上げており、 鐘様の音も多用していた。 そんなこともあり、生の打楽器アンサンブルによる演奏になってもそれほど意外さは無い。 展開は反復中心だけれども、少々メロディアスな展開もあり、minimal さはさほど強調されていない。 鐘の音のテクスチャを生かすためか、ダンスフロア仕様のような低音強調はされていない。 写真を観ると高さ1m近い大きな鐘も使われているようだし、 ライブではもっと迫力のある音の響きが聴かれるのかもしれない。
Brandt Bauer Frick [関連レビュー] ような生演奏 minimal アンサンブルは他にもいる。 prepared piano で知られる Hauschka もアンサンブルによる Salon Des Amateurs (130701, CD13-16, 2011, CD) をリリースしている。 そういう意味で、Elements Of Light は 斬新な試みという程ではなくそれに連なる音だ。 しかし、やはり楽器音というには倍音成分が多く音程がぼやける鐘の音のテクスチャは、他と比べて際立つ。 音色の方向性は違うが、organ (教会のパイプオルガン) を使った生演奏 electronica 作品 September Collective: Always Breathing Monster (Mosz, 021, 2008, CD) なども連想させられた。 このように近い試みをいくつか連想させられるあたり、こういう試みもかなり根付いてきているのだろう。
Pantha du Prince: Black Noise では、 これを基に Moritz von Oswald や Four Tet を迎えてのリミッスクアルバム XI versions of Black Noise (Rough Trade, RTRADCD613, 2011, CD) をリリースした。 この Elements Of Light の鐘の音のテクスチャもリミックスの素材にうってつけ。 リミックスアルバムも期待したい。