1991年以来毎年8月に富山県南砺市 (当初は福野町) で開催されている「ワールド・ミュージック」のフェスティバル Sukiyaki meets the world。 2011年からは Sukiyaki Tokyo として東京でも開催されるようになっている。 Sukiyaki meets the world も Sukiyaki Tokyo も今まで行く機会を逸していたが、今年は東京の3日目に足を運んでみた。
最初はまずアルゼンチンの女性歌手 Mariana Baraj。 前作 Churita (Cardonal Discos, 2010) に続いて 新作 Sangre Buena (Cardonal Discos, 2013) も reggae 等の影響も感じる pop な作りだったが、ライブはそれを再現するものではなく、 一人 percussion 叩きながらライブで音弄りしつつ詠唱するもの。 “Yo Soy Como El Tigre Viejo” で始め “Jantun Illiman” で締めるという所も含め、 前回の2010年の来日 [レビュー] と同様のスタイル。 といっても、ハコが大きくなってステージが遠くなったせいもあるかもしれないが、 PAやエコー処理が rock 的に歪み生声の響きを損なっているように感じる時もあった。 ペルーの folklore を現代的解釈で演奏している事で知られる guitar 奏者 笹久保 伸 が、 途中、ゲストで2曲参加して伴奏。おそらく Atahualpa Yupanqui のものと思われる曲も演った。
続いて、休憩を入れて、MPB とブラジルのコンテンポラリーな jazz の間を行くような音楽性で注目される ブラジル・ミナスジェライス (Minas Gerais, BR) の piano 奏者/歌手 Antonio Loureiro。 まずはソロ、piano とスキャットで Hermeto Pascoal を思わせるような変化に富んだ曲を。 これで引き付けられたが、この後、南博トリオのリズム隊である 鈴木 + 芳垣 が加わったピアノトリオ編成になると、 複雑なリズムや展開を持ちつつも、リリシズムがぐっと出た展開に。 こういう展開は、彼に限らず Pau Brasil / Núcleo Contemporâneo 界隈 (piano 奏者で言えば Benjamin Taubkin や André Mehmari) のCDを聴いていてもありがちで、 自分にはとっては少々苦手な所でもあったりする。 しかし、後半、佐藤の accordion が加わると、 Loureiro と複雑なフレーズを交わし合ったりユニゾンで決めたりと、聴き応えを感じた。
アンコールは、まずは Bariana Baraj と Antonio Loureiro のデュオ。 piano 伴奏というより、2人が声を合わせるような感も楽しめた。 2曲目は Baraj は退き、Loureiro の special band で。
ダブルビルということでそれぞれの音世界にじっくり入り込むという感ではないし、 ハコの大きさや PA からしても繊細な音を楽しめたわけではない。 踊りながら聴くようなことを想定していない特に立席である必然性の無い音楽を、 3時間立ち続けて聴くというのも辛いものがあった。 しかし、フェスティバルとなると個々の音楽性に合わせることも難しく、 そこは仕方ないだろうか。