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Review: L'Hijâz'Car: L'Hijâz'Car
2014/05/26
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
L'Hijâz'Car
(Buda Musique, 3769265, 2014, CD)
1)Le Cuirassé Potentat 2)Istanbul, Sur Ma Dérive Asiatique 3)We All Scream For Ice Cream 4)Igor Noir 5)1973 (Mulatu & The Duke) 6)Tyran Irak 7)Le Chien
Enregistré: 2013/09/5-11.
Grégory Dargent (oud, direction), Jean-Louis Marchand (clarinette basse), Etienne Gruel (percussions), Nicolas Beck (tarhu), Vincent Posty (contrabasse).

L'Hijâz'Car はフランス・アルザス地方ストラスブール (Strasbourg, Alsace, FR) で 結成された、地中海音楽に着想した jazz/improv のグループ。 CD等のリリースはほとんど無いものの、2000年代初頭には活動を初めていたようで、 アルジェリア南部タマラセット (Tamanraset) の Lalla Tahra 率いるトゥアレグ (Tuareg) の女性コーラスと共演するプロジェクトを制作。 2008年のアルジェリア北東部のシャウイ (Chaoui) の女性歌手 Houria Aïchi との共演 Les Cavaliers De L'Aurès (Accords Croisés, 2008) [レビュー] が、唯一のリリースだった。

そんな彼らの自身のみの名義での初のアルバムは、ゲスト歌手無しでインストゥルメンタルで聴かせるもの。 地中海といってもヨーロッパ側ではなくトルコから北アフリカにかけての音楽に着想しているが、 Mulatu Astake (Ethio-jazz) と Duke Ellington (“Caravan”) に着想したと思われる曲 “1973 (Mulatu & The Duke)” もある。 バルカン〜地中海音楽に着想した jazz/improv というと、 soprano sax や clarinet のモーダルなフレーズに guitar や mandoline が絡む 軽快な fusion のような音楽性のものが多い (それはそれで良いのだが)。 しかし、L'Hijâz'Car は音がぐっと低音寄り。 bass clarinet はアタック強く重いリズムを刻むように弾かれるときもあるし、 Les Cavaliers De L'Aurès で聴かれたような歪んだ音は無いものの oud や contrabass の響きも鈍く重い。 ゆったりした曲にも押し殺したような凄みを感じるときがあるが、 “Istanbul, Sur Ma Dérive Asiatique” や “Le Chien” のような曲での アコースティックだが重い音が畳み掛けるように刻む複合拍子の緊張感が魅力的なグループだ。