TFJ's Sidewalk Cafe > Cahiers des Disuqes >
Review: Liberty Ellman: Radiate; Myra Melford: Snowy Egret; Henry Threadgill Zooid: In For A Penny, In For A Pound
2015/11/15
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
(Pi Recordings, PI60, 2015, CD)
1)Supercell 2)Furthermore 3)Rhinocerisms 4)Moment Twice 5)A Motive 6)Skeletope 7)Vibrograph 8)Enigmatic Runner
Recorded 2014/11/03-04.
Liberty Ellman (guitar), Steve Lehman (alto saxophone), Jonathan Finlayson (trumpet), Jose Davila (tuba, trombone), Stephan Crump (bass), Damion Reid (drums).

Henry Threadgill Zooid のメンバーとしてなどニューヨークの jazz/improv シーンで活動する guitar 奏者 Liberty Ellman の9年ぶりのリーダー作。 前作 Ophiuchus Butterfly (Pi Recordings, PI19, 2006, CD) [レビュー] から、Mark Shim が抜け、drums が Gerald Cleaver から変わったものの。ほぼ同じ編成で、相変わらずの演奏が楽しめる。 オープニングの “Supercell” から tuba が大活躍。 Zooid はもちろん、同じくメンバーが大きく重なる Steve Lehman Octet: Mise en Abîme (Pi Recordings, PI54, 2014, CD) [レビュー] と共通する、複雑なリズムや細かいフレーズも多用しながら時には疾走感すらある演奏が楽しめる。 前作よりも guitar のソロが活躍する展開があり、 ループやディレイのようなエフェクトは控えめの少し歪んだ音色でのフレーズも楽しめた。

以下、最近リリースさた Liberty Ellman が参加したアルバムを2作合わせて紹介。

(enja yellowbird, yeb-7752, 2015, CD
1)Language 2)Night Of Sorrow 3)Promised Land 4)Ching Ching / For Love Of Fruit 5)The Kitchen 6)Times Of Sleep And Fate 7)Little Pockets / Everyone Pays Taxes 8)First Protest 9)The Virgin Of Guadalupe 10)The Strawberry
Recorded 2013/12.
Myra Melford (piano, melodica), Ron Miles (cornet), Liberty Ellman (guitar), Stomu Takeishi (bass guitar), Tyshawn Sorey (drums).

US西海岸を拠点に jazz/improv の文脈で活動する女性 piano 奏者の新作 (録音は2年前) は、 新プロジェクト Snowy Egret によるもの。 同じ高さの音で複雑なリズムを刻むような展開が多用される “Language” など、 Steve Lehman や Liberty Ellman のアプローチの Myra Melford なりの解釈のよう。 かつでの Trio のようにトレモロで華やかにフリーに弾きまくる “First Protest” や “Strawberry” のような曲でも、 ふと、そういう反復を強調するような展開が入るときもある。 また、“Ching Ching / For Love Of Fruit” では、Myra Melford を melodica を弾いている。 さすがに piano ような弾きっぷりは無理だが、たまに弾くときのある harmonium に似た音色での Ron Miles の強くミュートを効かせた trumpet との絡みは、音色の相性も良く、ユーモラスでもある。 新しい方向性を強く示しているわけではないが、様々な試みが聴こえるアルバムだ。

Henry Threadgill Zooid
(Pi Recordings, PI58, 2015, 2CD)
CD1: 1)In For A Penny, In For A Pound (opening) 2)Ceropic (for drums and percussion) 3)Dosepic (for cello) CD2: 1)Off The Prompt Box (exordium) 2)Trespic (for trombone and tuba) 3)Unoepic (for guitar)
Recorded 2014/12/08-09.
Henry Threadgill (alto saxophone, flute, bass flute), Jose Davila (trombone, tuba), Liberty Ellman (guitar), Christopher Hoffman (violoncello), ELliot Humberto Kavee (drums, percussion).

AACM (Association for the Advancement of Creative Musicians) 創設メンバーの一人 Henry Threadgill の2000年代に入ってのバンド Zooid も2枚組新作をリリースしている。 Liberty Ellman やそのグループの Jose Davila も参加しており、ELlman のアルバムとの共通点も多い。 しかし、Ellman や Myra Melford: Snowy Egret と比べて聴くと、 Threadgill の繰り出す素っ頓狂なフレースに、格の違いを感じてしまう。 Up Popped The Two Lips (Pi Recordings, PI02, 2001, CD) [レビュー] の頃には入っていた oud がいなくなり、仮想的 folk/roots 要素は控えめになったが、 flute の arco 弾きの cello の音色使いは特異に感じられる。