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Review: Paolo Fresu & Daniele di Bonaventura (live) @ Istituto Italiano di Cultura, Tokyo
2016/09/18
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
Paolo Fresu & Daniele di Bonaventura
イタリア文化会館 東京 [Istituto Italiano di Cultura, Tokyo]
2016/09/10, 17:00-18:30.
Paolo Fresu (flügelhorn, electronics), Daniele di Bonaventura (bandoneon).

イタリアの jazz/improv の文脈で活動するサルディーニャ出身の trumpet / flügelhorn 奏者 Paolo Fresu と、 近年、Fresu と多くの作品で共演している bandoneon 奏者 Daniele di Bonaventura との duo でのコンサートを観てきた。 このデュオでのアルバム In Maggiore (ECM, ECM2412, 2015, CD) からの曲を中心にアンコール2曲を含め約1時間半。 Mistico Mediterraneo (ECM, ECM2203, 2011, CD) というアルバムもあるが、A Filetta Corsican Voices 抜きということもあってか、予想よりも地中海的な folk 色は薄め。 しかし抽象に過ぎず、歌心すら感じる演奏が楽しめた。

舞台下手の Fresu は flügelhorn のみで、柔和で美しい音を響かせ、electronics は深めの残響をかける程度。 時折、ベルに付けたマイクのあたりを叩いてカチカチとリズムを刻んだり。 前半、一度、袖から下がったと思いきや客席後方に現れ舞台に向かって歩きながら演奏することもあったし、 circular breathing によるロングトーンを聞かせたりもしたが、 派手にパフォーマンスしたり特殊奏法を駆使したりすることなく、 ほとんど椅子に座り、右足を立てて上手の di Bonaventura の方を向き、歌いかけるように演奏していた。 対する di Bonaventura も、凝ったソロを演奏するというより、Fresu の音色を生かすような伴奏的な演奏。 di Bonaventura の bandoneon は chromatic なのか、細かく蛇腹を伸縮させることなく、 ゆっくり蛇腹を引き伸ばしながらゆったりと演奏。 lullaby が多く、子守唄を唄い聞かせるようだった。

ブラジルのSSW Chico Buarque の “O Que Sera” から、 ブルターニュの音楽に着想した “Ton Kozh”、 Puccini のオペラ La Boheme からの “Quando Me'n Vo” や古楽に着想した曲まで、 多様なバックグラウンドを持つ曲を演奏しながら、統一感のある音世界を作り上げているのはさすが。 アンコール1曲目は Johann Sebastian Bach の “Minuet in G minor” で、 2曲目はチリのSSW Victor Jara の “Te Recuerdo Amanda”。 In Maggiore 収録曲だが、 最後はイタリアかサルディーニャの音楽を持ってくるかと予想していたので、意外っだった。 classical というほど堅くなく、jazz 的なスイング感やブルース感も、folk 的なアクセントも薄く、三者からの絶妙な距離を置いた、 かといって、free improv のような抽象に走らず歌心のある演奏だった。

Paolo Fresu と Antonello Salis (piano, fisarmonica), Furio Di Castri (bass) のトリオ PAF [関連レビュー] のような、 時にアウトになるくらいな演奏の方が好みだけれども、 こういう雰囲気の演奏も良いと気付かされたコンサートだった。