Jen Shyu [徐 秋雁] は Pi Recording からのリーダ作や Steve Coleman のグループなどアメリカの jazz/improv の文脈で活動する 台湾と東チモールを出身とする両親を持つアジア系アメリカ人ヴォーカリストが来日したので、そのライブを観てきました。 共演したのは、八木 美知依 トリオ [鑑賞メモ] などで活動する日本の jazz/improv の文脈で活動する 須川 崇志。 第1部は即興で1時間弱、第2部は Jen Shyu の曲を演奏する約1時間半という休憩を挟んで2部構成3時間弱のライブでした。
月琴 (円形の胴を持つ中国の伝統的なリュート) や伽耶琴 (箏に似た朝鮮半島の伝統楽器)、薩摩琵琶などアジアの伝統的な楽器を使いますし、日本語を含め様々な言葉も使いました。 しかし、Jen Shyu の歌は、ベースが英語ということもあるのか、特に即興での抽象的なヴォイスの時など、アジア的なものはさほど感じさせない、少々アブストラクトな jazz/improv のヴォーカルでした。 様々な楽器を持ち替えまずが、ピアノを除くと、技巧的に演奏するのではなくむしろパフォーマンスの一部として鳴らすという程度でした。 須川の cello / doublebass は出しゃばらず、手数も控えめに Shyu の声を支えるよう。
第2部は Jen Shyu 作曲の曲というより、作の音楽劇というか、須川の伴奏で、様々な楽器を持ち替え歌り語る一人芝居でした。 親しかったワヤンクリ・アーティスト一家の交通事故と唯一生き残った娘という実際の話に基づく、 彼らに捧げる、鎮魂と、残った命に希望を見出すようなパフォーマンスでした。 照明演出もあって、踊りながら語り歌うのですが、狭い会場に並べられた楽器の間を縫うように移動したり、 客席からグランドピアノを挟んで向こう側で踊ったり。 こういう音楽劇、ダンスのようなパフォーマンスはかなり好みなのですが、 公園通りデラックスのような狭いライブハウスではなく、 ちゃんとした広さと照明設備のある小劇場、せめて、かつての Super Deluxe のような空間だったら、 パフォーマンスとして楽しめたのではないかと。その点が少々残念でした。