東京芸術劇場のリニューアル閉館を挟んで約2年半ぶりの開催となった 『ボンクリ・フェス』 (“Born Creative” Festival) も今回で8回目。 久々ということで前回 [鑑賞メモ] に続いて今年も足を運び、4つのコンサートを観ました。
ポーランドの弦楽四重奏団による、ライブでの electronics と video projection との組み合わせての自作曲のコンサートです。 演奏は post-classical 的というか抽象度低めで、 minimal music はもちろん rock, jazz 的な低音部にビート感を感じる展開もありましたが、 最も耳を捉えたのは中盤の東欧 folk (民族音楽) 的に感じる旋律でした。 electronics の使い方は、electronica 的なテクスチャを加えるというより、むしろ歪んだ音への加工を多用していました。 投影ビデオは白黒、うっすら顔が浮かび上がったり、実写の布のテクスチャをベースにしたものもありましたが、 基本は、流体を思わせる粒子や (物理的な) 場を思わせる線を物理エンジンかそれ相当の処理を使って演奏に合わせて動かすものでした。
ボンクリでは毎回お馴染みの日本のアンサンブルのコンサートです。 今回は、前半3曲はソロ、カルテット、トリオの少人数編成、 後半2曲は十余人のアンサンブルを舞台いっぱいに載せてのコンサートでした。 鑑賞魚水槽や吊るした紙に扇風機など非楽器音とアンサンブルが共演した 蓮沼 執太: Pierrepont の少々カオス気味の舞台も楽しみましたが、 エレクトリック・ギターの残響をソロで聴かせるような Lisa Illean: Tiding I、 ピアノの音も粒立ったトリオでの Zygmunt Krauze: Elegy のような音をむしろ楽しみました。
やはりボンクリでは恒例になりつつある、Jan Bang / Punkt のセッションですが、 歌物だった前回2023年 [鑑賞メモ] と打って変わって、音のテクスチャを織り成すような演奏でした。 Nils Petter Molvær の trumpet や Eivind Aarset や 大友良英の guitar もほぼ特殊奏法のみを使ってノイズ的な音を繰り出し、それに電子的に音を変容させて重ねていきます。 掠れた trumpet などはまだしも、guitar などは起点となる音を把握し難いほど。 そんな中で、大友の turntable の演奏によるプチプチいう針のトレース音が粒だって聞こえたのが、印象に残りました。
スロバキアのアンサンブルによる20世紀以降のスロバキアの作曲家の音楽を取り上げたコンサートです。 管楽器等も含むアンサンブルのようですが、弦楽四重奏団にピアノを加えた形での来日で、 演奏した曲も全て、3, 4人組み替えて演奏する室内楽的なものだけでした。 今回観た中で最もオーソドックスに classic 的なコンサートでした。 しかし、1曲目こそ東欧 folk 的な旋律を感じるときもありましたが、わかりやすい旋律やリズムの無い曲が並びました。
前回までは東京芸術劇場のコンサートホールやそこに隣接する5Fギャラリーを会場としていましたが、今回は地階の小劇場と隣接するアトリエが会場でした。 ステージに大人数を乗せることが難しいこともあってか、小編成による室内楽的な曲を中心としたプログラムだったように思います。 また、特にシアターイーストは小劇場の音響・映像設備を生かしたプログラムだったのではないでしょうか。 リニューアルオープン直後の会場スケジュール上の都合でコンサートホールが使えなかったため、こういうスタイルになったと想像しますが、 結果としては面白いプログラムになったのではないでしょうか。
しかし4つのコンサート全ては、少々欲張りすぎました。後半、集中が途切れがち。 さすがに疲れたので、大人ボンクリ (演奏者のいない電子音響や録音を使った音楽のコンサート) と、クロージングは観ずに帰りました。