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Review: Fujikura Dai, Jan Bang, Ensenble Nomade, Otomo Yoshihide, etc in “Born Creative” Festival 2023 (live) @ Tokyo Metropolitan Theater
2022/07/16
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)

今年で7回目となる 『ボンクリ・フェス』 (“Born Creative” Festival)。 毎回欠かさずという程では無いですが、去年 [鑑賞メモ] に続いて今年も、金曜夜と土曜の午後に足を運びました。

Jan Bang
Reading the Air
東京芸術劇場 ギャラリー1
2023/07/07, 18:00-18:45.
Anneli Drecker (voice), Jan Bang (vocals, live sampling, piano), Eivind Aarset (guitar, electronics), Anders Engen (drums), Audun Erlien (bass).

女性歌手の Anneli Drecker (ex-Bel Canto) をフィーチャーしているので歌物だろうとは予想していましたが、メインに歌ったのはJan Bang。 去年の『プンクトの部屋』のラストでも歌声を披露していましたが、低くソフトながら通る美声です。 ギタートリオのバッキングも付き、電子的なエフェクトも効かせますが、 Punkt でのノンストップ・セッションとは異なり、1曲ずつ切ってグランドピアノ弾き歌いを electronica で拡張するようなスタイルのライブでした。 Anneli Drecker は Jan Bang の歌声に合わせるように歌うことが多く、 彼女目当てで観に行ったところもあったので聴いていて少々不完全燃焼でした。 しかし、一曲、彼女がメインで歌った曲 (“No Paradise Lost”) があって、やはり良い歌声だ、と。

2024年頭にリリース予定のアルバム Jan Bang: Reading the Air (Jazzland / Punkt Editions, 377 947 3, 2022) からのライブとのことで、 先行でCDとアナログが会場売りされていました ((P)は2022になっており、プレスまで終わっているものの、リリースが遅れている模様)。 入手して聴きましたが、Anneli Drecker の他に Benedikte Kløw Askedalen、Simin Tander と3人の女性歌手をフィーチャーしています。 トラックはライブより electronica 寄りですが、歌もしっかり聴かせるアルバムです。 ちなみに、ライブでは Drecker が歌った “No Paradise Lost” は、アルバムでは Jan Bang が歌っています。

『ノルウェーの部屋』
Last Two Inches of Sky
東京芸術劇場 ギャラリー1
2023/07/08, 12:00-12:45.
Jan Bang (vocals, live sampling), Eivind Aarset (guitar, electronics), Anneli Drecker (voice), Anders Engen (drums), Audun Erlien (bass).

ミュージシャンは前夜の Reading the Air と同じですが、 こちらは、Eivind Aarset / Jan Bang: Snow Catches on her Eyelashes (Jazzland, 377 925 0, 2020, CD) の続編で、秋には Punkt Editions から新作アルバムがリリースされるとのこと。 前夜のグランドピアノは仕舞われ、アトモスフェリックでダブワイズなセッションを繰り広げました。 といっても、爆音ではなく繊細な音出しで、キャッチーなレゲエのリズムは避け、微かなグルーヴを作り出していきます。 ノンストップで行くかと思ったら、途中で一旦切って、Anneli Drecker の歌をフィーチャーした曲を挟みました。 彼女の歌声が入ると、少々 trip hop も思わせる音になりました。

『スペシャル・コンサートA面』
東京芸術劇場 コンサートホール
2023/07/08, 13:00-14:00.
1)Haris Kittos: 5 ways to move. アンサンブル・ノマド, 佐藤 紀雄 (conductor), Haris Kittos (video).
2)Du Yun: Slow Portraits. アンサンブル・ノマド, 佐藤 紀雄 (conductor), David Michalek (video).
3)藤倉 大 [Dai Fujikura]: Shakuhachi Concerto. 小濱 明人 (尺八), アンサンブル・ノマド, 佐藤 紀雄 (conductor), Nicolas Floc'h (photographer), Florence Drouhet (art direction images)

例年、途中休憩を挟んで2時間半ほどのスペシャル・コンサートですが、 今年はそれぞれ1時間、A面、B面の2つコンサートに分けての開催でした。 A面は映像付き作品のコンサートです。 最初の2曲は上映される映像に着想した作品で、 5 ways to move は乗り物の車窓から撮った流れる風景映像に、 Slow Portraits は昆劇パフォーマーや演劇俳優の動きを 高速撮影してスローモーション再生したものに合わせたもの。 Shakuhachi Concerto は初演時に演奏に合わせて上映されたという 海洋写真家 Nicolas Floc'h の海藻をとらえた白黒写真に基づくかなり抽象度の映像を付けて。 映像付き音楽といっても、Post-1classical なサウンドトラックではなく、コンセプト面で着想したようで抽象度の高いもの。 映像に対して悪目立ちしないように、ということもあるかもしれませんが、 演奏のアンサンブル・ノマドの皆さんもフォーマルに寄せた黒い衣装ででした。

『PLANKTONの部屋』
東京芸術劇場 リハーサルルームL (B2F)
2023/07/07, 14:00-21:00; 2023/07/08, 11:00-19:00 (入退場自由)
坂本 龍一が、クリスチャン・サルデと高谷 史郎とのインスタレーション作品「PLANKTON」(〈KYOTOGRAPHIE 京都国際写真展 2016〉委嘱作品)のために、作曲した音楽 [Music composed by Ryuichi Sakamoto for PLANKTON installation, a collaboration between Christian Sardet and Shiro Takatani produced by KYOTOGRAPHIE in 2016]

コンサートの合間にサウンドインスタレーションを体験。 映像等は用いずリハーサル室に席とスピーカーを配してのサウンドのみのインスタレーションで、 元の作品も Dumb Type 名義ではないものの、 目を閉じて聴いていると、Dumb Type のインスタレーション [関連する鑑賞メモ] の中にいるよう。

『電子音楽の部屋』 (アトリエイースト, アトリエウエスト) では、共産国(時代)の音楽が 大きくフィーチャーされていたのですが、ほとんど聴くことができず。 部屋に入ってすぐ、Clara Rockmore のテルミン演奏に入ってしまいました。

『スペシャル・コンサートB面』
東京芸術劇場 コンサートホール
2023/07/08, 16:30-17:30.
1)Jasna Veličković: Remote Me for two remote controls and three coils. 菊地 秀夫 (from アンサンブル・ノマド).
2)Alex Paxton: More Classical Music. アンサンブル・ノマド, 佐藤 紀雄 (conductor, guitar), 芸劇オーケストラ・アカデミー・フォー・ウインド, ノマド・キッズ.
3)Steve Reich: Grand Street Counterpoint, arranged for bassoons by Rebekah Heller. Rebekah Heller (bassoon).
4)大友 良英 [Otomo Yoshihide]: Walk on by for three tone. アンサンブル・ノマド, 佐藤 紀雄 (conductor, guitar), 大石 将紀 (saxophone), 大友 良英 (guitar), ノマド・キッズ.
5)大友 良英 [Otomo Yoshihide]: Walk on by for three tone Live Remix. Jan Bang (electronics), Eivind Aarset (guitar), Anneli Drecker (vocals), Anders Engen (drums), Audun Erlien (bass), 大友 良英 (guitar), 藤倉 大 (electronics).

B面は Alex Paxton や 大友 良英 の曲の様にノマド・キッズも演奏に参加した曲もあるように、こども向けも意識したプログラム。 アンサンブル・ノマドの衣装も一転カジュアルになります。 最初の Remote Me for two remote controls and three coils は、 TV用赤外線コントローラのボタンを押した際に発生する電波 (おそらく信号のために赤外線の高速にオンオフする際に発生する電波) をコイル (形状はコンタクトマイク様) で拾って音響化するというもの。 Rebekah Heller が世界初演した Steve Reich の曲は、録音済みの演奏にライブで音を重ねていくスタイルでした。

大友 良英 の新作曲は、ミュージシャンがステージ上だけではなく客席通路も歩き回っての演奏です。 大友 の叩く太鼓は合図になったり拍子を刻んだりするわけでもなく、 行列になって練り歩くというわけでなくそぞろに、 三連符の様にきっちりでとはなく三つ続ける音をおそらく即興で会場の彼方此方でパラパラと鳴らしていきます。 最後に皆がステージに上がるとやはりそれなりに祝祭感が出ますが、そうなるかならないかのぎりぎりの線を狙ったような演奏でした。 そんな演奏を、ラストには Jan Bang のバンドに 大友、藤倉 を加えて、 ボンクリフェス恒例の Punkt 流 Live Mix。 そぞろな演奏だけに電子的に大きく加工するとほとんど跡形もなく、かなりアンビエントなセッションになりました。