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Review: Adriana Varejão
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2007/02/25
Adriana Verejão
原美術館
2007/01/27-2007/03/31 (月休;2/12開;2/13休), 11:00-20:00

『カルティエ現代美術財団コレクション展』 (東京都現代美術館, 2006) での白いタイル壁の中に臓物か皮下組織が詰まっているかのような立体作品が印象的だった (レビュー) ブラジル (Brazil) の作家の個展だ。 『ブラジル:ボディ・ノスタルジア』展 (東京国立近代美術館, 2004) (レビュー) にも参加していたが、 その時の印象は薄い。

2005年以降の近作が中心の展示で、 2000年前後の『カルティエ現代美術財団コレクション展』出展作品以降の展開を観ることができた。 その一連の作品は、油彩だがアクリル絵具のような明るく軽い感じで、 プールやバスルームを思わせるタイルで覆われた空間と、 張られた水で揺らぐタイル目を描いた作品だ。 それは、歪んだタイル面という点で、2000年前後の作品と共通する感覚がある。 しかし、タイル面の下から肉が溢れてくるかのような沸き上がる強さに比べ、 透明感を感じさせる水の描き方もあって吸い込まれるような感覚もあり、 それもぐっとさりげなくなった。

結局、『カルティエ現代美術財団コレクション展』出展作品と同系統の作品である Parede com Incisões a la Fontana (2000) が、最も印象に残った作品だった。 白タイルの目を描いたキャンバスの切れ目の下から肉が溢れる作品で、 それ自体でもミニマル気味でカッコよかったし、 Lucio Fontana のオマージュにもなっている所も嫌味ではなく良かったと思う。

個展ということで、彼女の作品の展開も伺われるような 1990年代の作品も展示されていた。 2005年以降の作品も、そういう流れで観ると、 溢れる肉のようなものから、揺らぐ格子のようなものに、 興味が移行しているのかな思う。 そういう点では新作も判るとところもあるし、悪いという程ではない。 しかし、良くなったかどうかは微妙だと感じてしまった。

ちなみに、ミュージアムカフェ Café d'Art のイメージケーキは、 糸や磁器の破片が付けられたキャンバスからさりげなく肉が滲み出た Linha Equinocial (1993) に基づくものだった。

[sources]