ロシア革命後の第1次5ヵ年計画 (1926-1931) で建設された トゥルクシブ (Турксиб / Turksib) こと トルキスタン=シベリア鉄道 (Туркестано-Сибирская магистраль / Turkistan-Siberian railway; ⇒ru.wikipedia.org) の建設に関するドキュメンタリ映画だ。 制作されたのは完成前の1929年で、5ヵ年計画の期間中の完成を目指して、 その建設の意義を訴え建設に携わる人達の志気を鼓舞するかのようなプロパガンダ映画だ。
この映画はサイレント期の Russian Avant-Garde のドキュメンタリ映画の中でもよく知られるもので、 Avant-Garde 期の劇映画で多く脚本を手掛けている Viktor Shklovsky (例えば Bed And Sofa (Abram Room, 1927) (レビュー)) が脚本を手掛けている。また、 Семен А. Семенов-Менес (Semen A. Semenov-Menes; aka Semion Semionov) による映画ポスター (⇒Plakaty.ru) も、Russian Avant-Garde なグラフィックデザインの中でも有名なものだ。 Jelena Barchatowa (ed.), Russischer Konstruktivismus Plakatkunst (Weingarten, ISBN3-8170-2024-4, 1993) (レビュー) の表紙のデザインも Turksib のポスターが元になっている。 多くのサイレント映画のセルビデオ/DVDのリリースで知られる Kino がセルビデオをリリースしているが、 まだDVD化はされていない。 ちなみに、今回は全く音楽無しのサイレントで上映された。
ドキュメンタリということでさすが Shklovsky と感じさせるような話では無かったが、 画面の作りは明らかに Russian Avant-Garde 期のもの。 前半の建設の経緯を描くようなトルキスタンの様子を捉えた映像はそれほど Avant-Garde な感じではないが、 都会的なものテーマにすることが多い Avant-Garde 的な手法の自然の風景に対する使われ方は興味深かった。 後半の設計や建設の段階になると Avant-Garde 的な画面構成 (遠近短縮法など) がどんどん増えていくという感じが面白かった。
Sergei Eisenstein の The General Line (aka Old And New) (1929) や Dziga Vertov の Three Songs About Lenin (1934) などを観ても思うのだが、やはり、当時のソビエト国家建設というのは、 今から見るとむしろ近代化という面を強く感じる。 それは、Avant-Garde な映画なりデザインという偏った面から見ているせいもあると思うけれど。 しかし、馬や牛に乗るトルキスタンの人たちと鉄道の汽車の競争のシーンなど、 単なる近代化というよりロシア化という面もあって、 さらに、映画自体も少々オリエンタリズム的なものも感じてしまうというのも、否めない。 Avant-Garde の限界というか、そういう点も少々興味深く見られた。