ベルギー (Belguim) のダンサー/振付家 Damien Jalet が、 ベルギーのカンパニー Les Ballets C. De La B. 所属の Sidi Larbi Cherkaoui と Alexandra Gilbert、 オーストリア (Austria) 出身で electronica/improv の文脈で活動するミュージシャン Christian Fennesz とコラボレートした舞台作品だ。 メインは最後の Aleko だが、 それと Venus In Fur を 新作 Venari が繋ぎ、 1つの作品のように構成されていた。 Jalet と Gilbert が踊り、舞台上手で Fennesz が音出しをしていた。 演出で関わった Cherkaoui は来ていなかった。

舞台装置や照明の演出はミニマルながら、 衣裳や動きもシュールで幻想的な雰囲気を作り出していた。 踊るというよりも床上を這いまわるような動きが多く、 動物的なイメージを作り出していた。 特に印象に残ったのは、Gilbert の軟体芸的な動きだ。 Venus In Fur での毛皮を被っての蠕きの 見世物的な雰囲気もそうだが、 Aleko での長髮を足指で掴んでの動きは ユーモラスでもあり、サーカス的にすら感じられた。

長髪を足で掴んでの Gilbert の動きから始まり、 Jalet が加わっての Gilbert の長髪に打たれるような martial arts 的な動き、 グルジア (Georgia) のポリフォニーなどを音楽に利用した 東欧シュールというか幻想的な雰囲気など、 Aleko が3部の中で最も印象に残った。 Пушкин (Pushkin) の詩 Цыганы (The Gypsies, 1824) に基づく、ということも納得。 毛皮を被って蠕いていた Venus In Fur、 鹿の角を象徴的に使っての動物的で男性的とも感じる強い動きの Venari は、 Aleko の前振りとして観れば悪くないが、 独立した作品として観るとかなり物足りないようにも感じた。

そういう点では、 このように Aleko を拡張した作品ではなく、 Aleko を起点として創作され Jalet と Gilbert も参加している Cherkaoui の作品 Myth (2006) を観てみたかったように思った。