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Review: Tse Su-Mei @ 水戸芸術館 現代美術ギャラリー (美術展); 松宮 硝子 『クリテリオム79』 @ 水戸芸術館 現代美術ギャラリー第9展室 (美術展); 『アーティスト・ファイル2009 —— 現代の作家たち』 @ 国立新美術館 企画展示室2E (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2009/05/10

5月連休中に観た美術展の中から、いくつかまとめて軽くコメント。

Tse Su-Mei
水戸芸術館 現代美術ギャラリー
2009/02/07-05/10 (月休;05/04開), 9:30-18:00.

2003年の La Biennale di Venezia のルクセンブルグ (Luxembourg) 館で知られる ルクセンブルグ (Luxembourg) 出身の女性作家の個展。 コンセプチャルなインスタレーション中心の展示はいかにも現代美術っぽかった。 しかし、そのコンセプトは、社会的に当然視されている制度に辛辣に切り込むようなものというより、 もっと私的でかわいらしいユーモアという印象を受けた。 母がイギリス出身のピアニスト、父が中国出身のヴァイオリニストという ミュージシャンの両親持つこともあるのか、自身がチェロやピアノを弾いたりと、 音楽や音に関する作品が印象に残った。 猫のポートレイトに猫のゴロゴロいう音を合わせた “Son Pour Insomniaques (Sound For Insomniacs)” (2007) など。 嫌いではないものの、良いというよりも、こういう表現もここまで丸くなってしまったのだな、 と、感慨深い展覧会だった。

松宮 硝子
『クリテリオム79』
水戸芸術館 現代美術ギャラリー第9展室
2009/02/07-05/10 (月休;05/04開), 9:30-18:00.

水戸芸術館の若手アーティスト紹介シリーズ『クリテリオム』第79回は、 ガラスの破片を使った立体、インスタレーションの作家。 去年の Akasaka Art Flower 08 [レビュー] で観て、ちょっと気になっていた作家だ。 作家が Duquheapuer と呼ぶガラスの破片から形作った菌類ような造形物の生活環を ギャラリーいっぱいに表現したインスタレーションだった。 また、5月5日のアーティストトークを聞くことができた。 細長いガラスの破片も多用されているので、炎で伸ばしたりしているのかと思っていたのだが、 基本的に割った破片のみを利用しているようだった。それで、多様な破片を作り出しているのは凄い。 Duquheapeur のコンセプトについては、粘菌風の形状といい、 南方 熊楠 の博物学へのオマージュか、もしくはパロディが背景にあるのかな、と予想していた。 しかし、そういうマニアックな面はトークからは全く感じられず、かなり天然。拍子抜けした。

『アーティスト・ファイル2009 —— 現代の作家たち』
国立新美術館 企画展示室2E
2009/03/04-06/16 (火休;05/05開), 10:00-18:00.
Peter Bogers, 平川 滋子 (Hirakawa Shigeko), 石川 直樹 (Ishikawa Naoki), 金田 実生 (Kaneda Mio), 宮永 愛子 (Miyanaga Aiko), 村井 進吾 (Murai Shingo), 大平 實 (Ohira Minoru), 齋藤 芽生 (Saito Meo), 津上 みゆき (Tsugami Miyuki).

宮永 愛子 [関連レビュー] の 「色 —color of silence—」 は、 古い簞笥の収納スペース中に ガラスケースにおさめられライトアップされたナフタリンを使った彫刻を配置し、 木製のリンゴ箱を積み上げた間にわたした板の上に陶器を置いたもの。 ナフタリンと簞笥というのはいささかベタにも感じたけれども、 資生堂ギャラリーでの展覧会 (2009/01/09-02/01) の展示が、 奇麗過ぎて資生堂の商業ディスプレイかのようになってしまったように感じたので、 むしろこのような作りの方が良いように思う。

他には 村井 進吾 の御影石と水を使ったミニマルな彫刻が気に入った。 齋藤 芽生 の作品が取り上げる毒とか恋愛、情念は、 ステロタイプに過ぎて、サブカル雑誌向けのイラストっぽく感じた。 タイトルに「四畳半」などを入れたりするあたり、あえて狙っていると所もあるとは思うのだが。