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Review: Animated Soviet Propaganda: From The October Revolution To Perestroika (DVD)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2009/05/06

6月6日から7月3日にかけて、渋谷 Uplink Factory で、 『ロシア革命アニメーション 1924-1979 —— ロシア・アヴァンギャルドからプロパガンダへ』 という、ソビエト連邦時代に主に政治的プロパガンダを目的に制作されたアニメーション映画の 特集上映が予定されています。 Юрий Норштейн (Yuri Norshtein) などとは異なるロシア・アニメーションの系譜を 追うことができる上映会です。劇場で観られるめったにない機会でしょう。

この上映会のブログラムの内容は、3年程前にリリースされた 以下のソビエトのプロパガンダ・アニメーション映画のDVDボックスセットに収録された作品の中から 約半数を抜粋したものとなっています。

(Coюзмультфильм / Jove Film, no cat. no., 2006, 4DVD[NTSC/0])

このボックスセットは、1924年の革命直後の Russian Avant-Garde 期の作品から、 1984年のペレストロイカ期直前のものまで、幅広く収録しています。 構成は年代順や監督別ではなく主題別で、DVD 4枚それぞれに、 “American Imperialists”、 “Facist Barbarians”、 “Capitalist Sharks”、 “Onward To The Shining Future: Communism” と題が付けられ、おおよそそれに従って分類収録されています。 アニメーション技法的な面から観ると雑然とした印象を受けます。 冷戦と第二次世界大戦での対立の構図を意識させられる “American Imperialists” や “Facist Barbarians” より、 “Capitalist Sharks” と “Onward To The Shining Future: Communism” の方が 楽しめたように思います。

英語字幕の入れ方が大胆過ぎてオリジナル画面を乱し気味なうえ英語字幕を非表示にできないこと、 トリミングのしすぎでオリジナルのロシア語字幕が切れてしまっていることが多い、など、 DVD化上の問題も気になります。 全く観られないよりもましかもしれませんが、もう少し丁寧な仕事をして欲しいものです。 このような問題点を上映会ではどうクリアしているのか、気になります。 ひょっとしてオリジナルのフィルムに基づくものなのでしょうか。

収録されている Russian Avant-Garde 期アニメーション [関連レビュー] で有名所は、 Дзига Вертов (Dziga Vertov) の Советские игрушки (Soviet Toys, 1924) と Киноправда (Kino Pravda, 1924)、 Аэлита (Aelita, 1924) のパロディとして知られる Межпланетная революция (Interplanetary Revolution, 1924)。 Межпланетная революция の制作スタッフの1人 Николай Ходатаев (Nikolai Khodataev) がらみのアニメーションが 他に4本収録されています。他に Avant-Garde 期のものは1本。 といっても、いずれも素朴なアニメーションで、 Avant-Garde 期のグラフィックデザインに観られる斬新さからは程遠いです。 こうしてみると、 Михаил Цехановский (Mikhail Tsekhanovsky) のアニメーション Почта (The Post, 1929) (このボックスセットには収録されていません) は例外的なかっこよさだったのかもしれないなあ、と感慨深いものがあります。

収録され中で最も良い出来は Владимир Тарасов (Vladimir Tarasov)Вперед, Время! (Forward March, Time!, 1977)。 Russian Avant-Garde の詩人 Владимир Маяковский (Vladimir Mayakovsky) の詩に基づくアニメーション・ファンタジーというとこですが、かなりシュール。 オープニングやエンディングの少々 psychedelic な歌を聴くと、 そういう影響もあったのかもしれないな、と。 Tarasov 監督の作品はもう一作、 Shooting Range (1979) が収録されています。 こちらは、ソビエト時代の underground な free jazz グループ Трио Ганелина (The Ganelin Trio) が全面的に音楽を付けており、 シュールでリズミカルなアニメーションに合わせた演奏がお薦め。 The Ganelin Trio のミュージック・ビデオとして楽しめる作品です。 ちなみに、監督の Vladimir Tarasov は jazz drummer としても知られ、 The Ganelin Trio のメンバーでもあります。 また、現代美術作家 Илья Кабаков (Ilya Kabakov) との コラボレーションもあります [関連レビュー]。

(以上、談話室への発言として書かれたものの抜粋です。)