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Review: Monochrome Circus + じゅんじゅんSCIENCE 『D_E_S_K』 @ こまばアゴラ劇場 (ダンス)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2009/07/26
こまばアゴラ劇場
2009/07/25. 18:00-19:20.

京都を拠点に活動するダンスカンパニー Monochrome Circus と、 水と油 (活動停止中) の じゅんじゅん (高橋 淳) のコラボレーションによる舞台を観てきた。 じゅんじゅんSCIENCE の舞台は、去年観た 『アリス』 [レビュー] に続いて2回目。 前回は、伊藤 キム、たがぎまゆ という個性の強いダンサーをどう使うのかという興味があったが、 今回共演する Monochrome Circus についてはほとんど事前知識なし。 『アリス』にも出演していた 森川 弘和 が在籍していたカンパニーだということも、 今回の公演で気付いたという程度だ。 むしろ、東京では観る機会があまりない関西のカンパニーを観る良い機会かな、という感じだった。

フライヤにあった「机にまつわる3つのダンス」という言葉を読んで思い出したのは、 水と油 の 『机上の空論』 [レビュー]。 その 水と油 のフライヤにあってもよさそうな言葉から、 『アリス』と比較して、じゅんじゅん と資質の近いカンパニーとのコラボレーション、と、予想した。 そして、実際に観ても、その予想は大きく外れていなかった。 小劇場での短編3つということもあって、 いささか少さくまとまってしまったと感じたのも確かだが、十分に楽しむことができた。

『水の家』、『deskwork』の後、10分の休憩を挟んで『緑のテーブル』と、 3作品を上演した。それぞれ20〜30分程度の短編で、途中休憩を含めても70〜80分程度だった。 以下それぞれの作品について簡単に。

『水の家』
振付・演出: 坂本 公成.
出演: 森 裕子, 森川 弘和.

この作品は、Monochrome Circus のレパートリーの一つ、 舞台中央に置かれた、1m四方高さ1m程のテーブルの上で繰り広げられるダンスだ。 テーブルの周囲の床を照らす青い光、水の流れる音から、 川 (流れる水) の中に突き出た岩か足場のよう。 森川 が一回床に下りただけで、 その狭い場所から落ちないようにするかのように動きが繰り広げられる。 面白かったのは、限定された空間で、身体の位置をパズルのように組み合わせつつの動き。 こういう所は じゅんじゅん の作品とも共通するように感じた。 水上の足場と見立てたような空間を、 動きやライティングの変化で違う空間に繋げてしまうような展開が無く、 むしろ、狭い空間に閉じ込められた男女の情を描くかのような所に、 じゅんじゅん の作品との違いを感じた。

『deskwork』
振付・演出・出演: じゅんじゅん.

この作品は、じゅんじゅん のソロ新作。この作品が最も面白かった。 照明を落とした舞台中央に床に、矩形に明るく照らした空間を作り、 そこをデスクトップに見立てた動きで始まり、それで終わる。 腹這いとなり、矩形の光で肘付き上半身が光に浮かびあがると、 闇に沈んだ下半身はまるで床下で座って机に向かっているよう。 しかし、全身を横転する動きをする度に、そういうイメージが破られていく。 そして、次第に舞台全体が明るくなり、矩形の光が消失する。 じゅんじゅん の動きも立ち上がってのものとなる。 一方、矩形の光の世界に戻るのは一瞬だ。 異なる場面空間の緩慢な移行と突発的な変化の両方を見せたところも良かった。 しかし、闇に浮かび上がる矩形の光を使った場面のシャープさに比べ、 舞台全体が明るい場面が少々緩んだように感じられたのが、少々気になった。 この緩さがあったから最後のシャープさが際立ったようにも思うが。

『緑のテーブル』
振付・演出: じゅんじゅん. 舞台美術: graf. 音楽: 山中 透.
出演: 森 裕子, 合田 有紀, 野村 香子, 森川 弘和.

テーブルトップが天然芝となった1×2m程度のテーブルを巡る4人のパフォーマンス。 そういう点も、『机上の空論』と比較したくなるような舞台だった。 しかし、水と油 が好んでやっていた、机の上と下の空間や、机の両端の空間で、 互いに独立ながら干渉て繋がるような動きを繰り広げることは、あまり無かった。 テーブルの上で 森 が四つ這いで動き、下で 森川 がトップボードを挟んで対称となるかのような 動きを見せたくらいだろうか。 水と油 を思わせた動きは、森 と 野村 に支えられつつもくずおれる 合田 の動きと、 それに平行して一人で同様に動く 森川 の動いた所。 そういう意味でも、森川 の動きが最も 水と油 っぽく感じられた。 そして、それが最も楽しめたのも確かだ。 その対極に感じられたのは、野村 の動きだったろうか。 テーブルトップの天然芝の上での背を土で汚しつつの仰向けでの動きなど、 水と油 ではあまり見られなかった情念的な表現に感じた。

終演後、じゅんじゅん、Monochrome Circus の 坂本 公成 に、 水と油 の おのでらん (小野寺 修二) を加えてのトークがあった。 その時に、今までのじゅんじゅんに無かったような試みとして、 この天然芝の使用が指摘されていた。 言われてみればそうだと思うけれど、客席から観ていた限りでは 芝自体から生々しさはほとんど感じられなかったのも確かだ。 ちなみに、『緑のテーブル』のテーブル等の舞台美術は、 大阪のデザイナー・グループ graf が担当していた。

ちなみに、作品中ではなくアフタートークとはいえ、じゅんじゅん と おのでらん が 公的な場で顔を合わすのは、水と油 活動休止後初とのこと。 和やかな感じでトークも楽しめた。 トークにには加わらなかったけれども、客席には ももこん (藤田 桃子) の姿も見えた。 すがぽん (須賀 令奈) の姿は見えなかったので、 さすがに 水と油 の4人勢揃い、というわけではなかったようだ。