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Review: じゅんじゅんSCIENCE 『アリス』 @ 吉祥寺シアター (ダンス)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2008/07/16
じゅんじゅんSCIENCE
『アリス』
吉祥寺シアター
2008/07/12, 19:30-20:40.
振付・演出: じゅんじゅん (高橋 淳).
出演: 伊藤 キム, たがぎまゆ, 森川 弘和, じゅんじゅん.

1995年にパントマイムをベースとしたフィジカルシアターのカンパニー 水と油 を結成、2006年の 水と油 活動休止後はソロとして活動する じゅんじゅん (高橋 淳) の主宰するプロジェクト じゅんじゅんSCIENCE の新作公演を観てきた。 水と油 は好んで観ていたものの 活動休止後のソロ活動からは遠ざかってしまっていたので、観るのも久々。 観に行こうと興味を引かれたのは、 個々のパフォーマーの個性はあまり目立たせずに パフォーマー達の動きが作り出す空間構成で見せていた 水と油 の じゅんじゅん が、 むしろ強烈な個性で見せる 伊藤 キム や たかぎまゆ をどう使いこなすのか、 という所だった。 最初のうちは少々退屈したし、使いこなせていたかどうかは微妙だったけど、 普通に楽しめた舞台だった。

面白いと思ったのは微妙な相互干渉のある二重世界を動きで描くような所。 水と油 では空間は分節してしてその接点で干渉させることが多かったが、 この作品では重ねた二枚のレイヤーの中でパズルのように干渉する動きを組み合わせていた。 例えば、中盤で 伊藤 キム と たかぎまゆ がメインの動きをする一方で、 じゅんじゅん と 森川 弘和 がそれを操る黒子のような動きをして、 その4人の動きを組み合わせる場面があったのだが、 時折、黒子的な じゅんじゅん や 森川 の動きが メインの 伊藤 キム や たかぎまゆ の動きに干渉したり、 伊藤・たかぎ と じゅんじゅん・森川 の立場が逆転したり。 そのレイヤー重ねの変化のさせかたやそのリズムが絶妙で、とても面白かった。

水と油 ではあまり使っていなかった映像使いも気になったのだけれど、 特に、伊藤 キム のソロなどレイヤー重ねを思わせるもの。 そういうイメージをテーマにしていたのかもしれない。 しかし、ビデオ使いで気に入ったのは、 森川 弘和 のソロから、それに たかぎまゆ が絡んだ所。 赤いプラスチックの椅子とそのミニチュアを小道具に使い、 ミニチュア椅子が置かれたミクロな世界をビデオで舞台の後方に投影して 普通の椅子の普通の世界と重ね合わせていた。 手の動きとダンスやマイムの動きを繋げたりするのもユーモラス。 この作品の中で最も気に入ったところだった。

終り近くの『ピタゴラスイッチ』の「アルゴリズム体操」の ダンス/マイム版のような展開を観ていて、 こういうパズルを組むような動きを 水と油 は得意としていたなあ、と。 水と油 の作品をまた観てみたくなってしまった。

ちなみに、 Lewis Carroll, Alice's Adventures in Wonderland (1865; ルイス・キャロル 『不思議の国のアリス』) が原作ということだったが、物語を意識させられるようなことは無く、 単に登場人物のキャラクターを使っただけに近かった。