Bruno Beltrão は、ブラジル・リオデジャネイロ州ニテロイ (Niterói, Rio de Janeiro, BR) 出身。 1990年代からストリート・ダンスの文脈で活動を始め、 2000年代に入りコンテンポラリー・ダンスの文脈で作品を制作・発表するようになった振付家だ。 その Beltrão が Rodrigo Bernardi と1996年に設立したカンパニーが Grupo de Rua だ。 その程度の予備知識しか無かったので、 street dance や capoeira の動きも使い、 hip hop や baile funk のビートに乗ったダンスを見せるのだろうか、と予想していた。 しかし、その動きこそ street dance 的なものから組み上げていたが、 舞台作品としての作り上げ方は、それをミニマルに抽象化したようなものだった。
前半は、街の雑踏の微かな音のみを使いパフォーマンスした。 それも、舞台奥の照明を落とし、観客席すぐ前の空間のみを使って。 2〜3人のパフォーマーが代わる代わる奥から出て、踊るというよりも、 ちょっとした通りでの小競り合い絡み合いのような動きを見せた。 その動きの場所からも、人垣越しに通りを見ているように見える所は面白かったが、 音楽も派手な動きや照明演出もなく、少々、眠気を感じたの確かだ。
面白く感じるようになったのは、音楽も使い出して、舞台を広く使うようになってから。 後ろ向きで走る動きや、手を床に付いて横に転がり回るような動きが、面白かった。 特に舞台下手から他のパフォーマーに投げ出されるようにして走り出すような所など、 打ち出された粒子が運動しながら反応して変化していくよう。 音楽は、hip hop や baile funk といったものでは全くなく、 また、samba や bossa nova のようなブラジルを想起させるようなものでもなく、 むしろ、intelligent techno というか IDM 的なもの。 これはちょっと意外だったけれども、 暗く黒光りする床と照明以外ほとんど無い舞台に合っていたと思う。
確かに、去年観た Grupo Corpo [レビュー] や Cia. Deborah Colker [レビュー] と比べたら ストリート的な表現かもしれないが、 ステロタイプなストリート的な記号は無し。 それはそれで、動きの面白さをミニマルに押し出しているようで、良かったと思う。