去年、東京都写真美術館で回顧展的な展覧会を開催した 柴田 敏雄 の展覧会が、 都内2つのギャラリーで開催されている。 こちらはカラー写真による新作展だ。 砂防ダムや擁壁など人の手の加わった山中の様子を構成的に捉えた写真というのは相変わらず。 2年前に『Work:Man』展 [レビュー] を観たときは、 初めてカラー作品を観たということもあったが、 人の気配など今までの作品との違いを強く意識させられた。 しかし、今回の新作には人の気配を感じるような所もなく、 むしろ、昔からカラーでこういう写真を撮っていたような気がする程だった。
ダムの洪水吐きから流れ落ちる水を上から捉えた写真など、カラー写真にもかかわらず、 白黒写真と同じようなモノトーンな仕上がりになっているのも面白かった。 しかし、やはり、カラーならではの色彩感も楽しめる作品、 例えば、複数段の砂防ダムを落ちていく明るい茶色い水を捉えた写真のリズム感、 濃い青のダム湖の水面に浮きロープで止められた茶色い流木を捉えた写真の 空に翼を広げたかのような様などが、特に楽しめた。
こちらは、未発表の白黒写真の展覧会。 『For Grey』と同じと思われる砂防ダムの写真もあったので、最近撮ったものもあるのだろう。 やはり、山中のダムや擁壁の写真なのだが、残念ながらいまいちピンとくる作品が無かった。 カラーでの作品を観た直後ということもあるかもしれないが、 ギャラリーの雰囲気にいまいち馴染めなかったというのもあるかもしれない。
ちなみに、こちらの展覧会は、11月15日までと11月16日からの2期に分け、途中で展示替えがある。 今回観たのは前期の方だ。