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Review: 柴田 敏雄 『ランドスケープ』 (Toshio Shibata, Landscape) @ 東京都写真美術館 (写真展); 柴田 敏雄 (Toshio Shibata), Still In The Night @ 双ギャラリー (写真展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2008/12/14
柴田 敏雄
Toshio Shibata, Landscape
東京都写真美術館 2F展示室
2008/12/13-2009/2/8 (月休;祝月開 翌火休;12/29-1/1休), 10:00-18:00 (木金10:00-20:00).

柴田 敏雄 は、コンクリートで固められた擁壁や砂防ダムを構成的な画面で捉えた シリーズ 『日本典型』で知られる写真家だ。 その柴田の初期1980年代の作品から現在のカラーの作品までの一連の仕事を集めた 回顧展的な展覧会だ。 日本でこの規模の個展は初めて。この写真家の全容を知るのにお薦めの展覧会だ。

展示は3部構成、2006年以降に発表してきているカラーの写真を集めた「color」、 1980年代前半にベルギーから戻った直後に取り組んだ白黒の夜景の写真を集めた「night」、 そして、代表作『日本典型』シリーズを中心に白黒の写真を集めた「B&W」となっている。

1980年代の「night」の作品を観たのは今回が初めてだったが、 とても興味深く観られた。 高速道路の夜景、それも、インタージェンジのゲートや サービスエリアのガソリンスタンドを捉えたものがほとんどだ。 ガソリンスタンドを捉えたものは、Edward Ruscha のコンセプチャルな写真 Twentysix Gasoline Stations を、夜景を使ってさらに抽象化したかのよう。 しかし、インターチェンジのゲートの光の反覆パターンの作る画面が、面白かった。 ビルやマンションの照明を捉えた 畠山 直哉 の Maquette/Light シリーズ (2002) ほどは徹底していないけれども。

もちろん、「B&W」でのコンクリートの擁壁やダムを捉えた作品も良い。 風景をグラフィックスか抽象絵画のように撮影する写真のマスターピース的な風格すら感じる。 この中で印象に残ったのは、初めて観たということもあると思うが、 The Museum of Contemporary Art, Chicago の委嘱で制作した Grand Coulee Dam のシリーズ (1996)。 コンクリートの壁面を滑り落ちる水のテクスチャを捉えた画面下三分の二と 水面に浮かび流れる泡を捉えた画面上三分の一の対比も面白い。 そして、同じ構図の写真が3枚並べられることにより、 画面を抽象的に観るように誘導されるような所も良かった。

最近のカラーの作品を集めた「color」は、去年末に Zeit-Foto で観たものも多く [レビュー]、 そのときと印象は大きく変わらなかった。 内覧会で作家自身の話を聞くことができたのだが、 カラーの作品において人物を写し込んでいることについて話を聞くことができた。 それによると、作業員の赤いヘルメットや黄色い作業服が カラーの場合には画面上のアクセントになるから、ということだった。 人物や作業用車両もあくまで画面を構成する幾何的、色彩的要素として意識している というのが興味深かった。 話を聴きながら写真を見直すと、 カラーの作品に感じる感傷というのは、人物を写し込んでいるというより、 むしろ色彩の問題かもしれない。

柴田 敏雄 (Toshio Shibata)
Still In The Night
双ギャラリー
2008/12/13-2009/1/15 (月火休;水木アポイントのみ;12/29-1/8休), 13:00-19:00

『ランドスケープ』展 (東京都写真美術館) に合わせて開催されているギャラリーでの個展だ。 ここでは、夜景を捉えた1980年代の白黒写真シリーズを展示している。 また、合わせてこのシリーズの写真集も発売されている。

展示されていた写真の約半数は『ランドスケープ』展と重なっている。 しかし、それ以外を捉えたもの、 特にパーキングエリアやサービスエリアのトイレを捉えたものが面白かった。 多くの便器が並ぶことにより生じるミニマルな反覆感を捉えたものも良い。 モニュメンタルなアヴァンギャルド建築をキッチュにしたようなトイレや 装飾性を排したフラットだ直方体のトイレなどが、 夜闇の中に内側からの照明で間接照明的に造形が浮かび上がる所が面白い。 これだけでシリーズを作っても良いと感じる程だった。

(2008/12/21追記)