コンクリートで固められた擁壁や砂防ダムを構成的な画面で捉えた 『日本典型』で知られる写真家の新作の展覧会だ。 今回の Work:Man もその延長の作品で、 山間部というか河川上流部のダムや治水工事の入った風景を捉えた写真だ。
ランダム性の高い自然の造形と幾何的な人工の造形を組み合わせて構成した画面は、 山間部の治水近代化を称揚するようでもなければ、 開発による自然や風景の破壊を告発するようでもない、 もっと客観的な視線を感るものだ。 例えば、枯草色の斜面を護岸と砂防ダムで固められた川がS字に流れる写真など、 その枯草色の斜面の柔らかいテクスチャと強いS字の線の対比も新鮮で良かった。
しかし、今回の新作の特徴は、人影が写り込んでいること。 例えば、アーチ式コンクリートダムの法面を捉えた写真では そこに組まれた足場に作業する2人の人影が見える。 もしくは、高い擁壁を捉えた写真では、 その下でショベルカーが作業し、その現場に向かう車が流れて写っている。 擁壁の脇にある急斜面のブルドーザ道にはキャタピラの痕もある。 そういうものが写っているせいか、自然の造形と人工の造形の交じりあう画面に 人の営みの気配を写し込んでいるかのように感じされた。 今回の展覧会のタイトル Work:Man というのも、 そういう点を意識したのだろう。 そこに、嫌味という程ではないが、ちょっと感傷的な印象も受けた。
しかし、結局の所、最も気に入ったのは、そういう人影を写し込んでいない写真だった。 一つは、ダム湖の上流部のような所を撮ったもの。 画面の下半分に写った貯った流木が流れでブレて画面の上半分の静的な画面と対比を成していた。 赤い鉄橋の赤い三角トラスが霧にくっきり影を落す様子を捉えた写真も、 赤の三角トラスの鮮やかさとにぶくぼんやり霧に霞む背景が対比を成し、 それを霧に落ちるくっきりした影が繋いでいるようで、面白く見られた。