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Review: 『日常/場違い』 @ 神奈川県民ホールギャラリー (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2010/01/23
Everyday life - Another space
神奈川県民ホールギャラリー
2009/12/16-2010/01/23 (12/30-1/4休), 10:00-18:00 (12/19,1/16 10:00-19:00)
雨宮 庸介 (Yosuke Amemiya), 泉 太郎 (Taro Izumi), 木村 太陽 (Taiyo Kimura), 久保田 弘成 (Hironari Kubota), 佐藤 恵子 (Keiko Sato), 藤堂 良門 (Ramon Todo).

開館35周年として企画された現代美術のグループ展だ。 タイトルから大きく外れない、日常的なものをちょっとシュールに異化するような 立体/インスタレーション作品が楽しめた展覧会だった。 印象に残った作品について個別にコメント。

最も気に入ったのは、木村 太陽 の「巣穴 (Der Bau)」 (2009)。 段ボール箱を並べて作った高さ50cm程の迷路状の通路の中を這い回りながら、 途中三カ所に設置されているモニタでアナログレコード再生の様子を収録した映像を観るという作品だ。 それもただ再生しているのではなく,レコード盤の上を蛸の球が転がっていたり、 レコード盤に付けられたゴム紐で首が締まっていったり、プレーヤーごと地中に埋められたり。 段ボール箱の筒の中を這い回って観るというシチュエーションも、 映されている映像も、不条理でシュールなユーモアを感じるもので,それが可笑しい作品だ。

雨宮 庸介 の「わたしたち」 (2009) は、 一昨年に観た「ムチウチニューロン」 [レビュー] を思わせる、ビデオを使ったインスタレーション作品。 「ムチウチニューロン」同様、ロッカーの扉が入口になった部屋の中にはロッカーが沢山並んでいた。 そして、壁の一面には、そのロッカーが並んだ部屋の様子を捉えた映像が投影されているのだが、 部屋と映像の中とで異なる時間が流れていて、不条理なパフォーマンスが行われているという。 違いは、「ムチウチニューロン」では部屋で実際にパフォーマンスも行われていたのだが、 今回のインスタレーションでは映像の中だけだったということ。 これは単にタイミング悪くパフォーマンスの無い時間帯だっただけかもしれないが、 「ムチウチニューロン」を知っているだけに、少々物足りなく感じてしまった。

屋外展示の 久保田 弘成 の 「Berlin Hitoritabi」 (2008) は、 旧東ドイツ製の乗用自動車 Trabant に対して横に太い回転軸を通し、 鉄骨製の台の上でバイク用のエンジンを動力に回転させるというものだ。 ただ回すだけであれば タムラサトル の作品 [レビュー] のようなのだが、 ちょっとヤンキー風の出で立ちで演歌をBGMにバイクを運転するかのようなパフォーマンスを伴う所が、異なる所。 どうして、Trabant で演歌でヤンキー風なのかよく判らなかったが、 乗用自動車を回転させるという力技でナンセンス物として楽しめてしまう所があったのも確かだ。

力技といえば、佐藤 恵子 の「変容」 (2009) も、 会場中最も広い第五展示室の半ば吹き抜けとなった地階のフロアと一階のフロアを使い 三部作の巨大な箱庭のようなインスタレーションを作り出していた。