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Review: タムラサトル 『Domain of Art 1 タムラサトル展』 @ プラザノース ノースギャラリー (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2008/07/26
『Domain of Art 1 タムラサトル展』
プラザノース ノースギャラリー
2008/07/19-08/02 (07/28休) 10:00-20:00

新作もあったが、過去の作品が中心の展覧会だ。 それなりに広いギャラリーとはいえ、その中にぎっしり大物が3点。 「Standing Bears Go Back」 (1998; レビュー)、 「電動雪山」 (2002; レビュー)、 そして、「バタバタ音をたてる2枚の布」 (2000) をスケールアップした新作 「バタバタ音をたてる2枚の布 #2」 (2008) だ (そのプロトタイプ「風に吹かれる布」 (1999) の レビュー)。 一度は観たことがある作品ではあるが、 この手の作品はその迫力を体感してこそのものだ。 展示スペースを要することから生で観られる機会が少ないので、 こうしてまとめて観られたのは、ありがたかった。 「バタバタ音をたてる2枚の布」は、最近の「接点」シリーズ同様 ミニマリズム系の作品で、とても良いと思う。 しかし、「Standing Bears Go Back」を久々に観て、 この作品や「スピンクロコダイル」 (1997; レビュー) のようなとぼけたユーモアもやはり捨て難いなあ、と、再認識した。

新作の1つは、2006年以降展開している「接点」シリーズの新展開だ。 接点火花の散る擦動接点を使った作品は展示スペースの制約で展示できないことが多いため、 新作ではこれをクリアすることに挑戦したとのこと。 新作では、不安定な擦動接点の代わりに、 レバーの長さを20cm近くにした自動復帰型のトグルスイッチ50個を5×10にぎっしり並べ、 そのレバーを回転するアームで周期的になぎ倒している。 スイッチはそれぞれ個別の電球に繋がっており、 レバーがなぎ倒されると電球が点滅することになる。 従来の擦動接点の作品では全ての電球が同じように揺らいでいたが、 今回の作品では電球ごとに点滅にばらつきがある。 また、従来の作品では常に明るさが揺らいでいたが、 今回の作品ではスイッチをアームがなぎ倒すタイミングで間欠的的に点滅することになる。 明るい電球群がまたたくことによる迫力という点では、 確かに充分に楽しめるものになっている。 しかし、不安定な電球光の揺らぎやバチバチいう接点火花の醸し出す 不隠さは失われてしまったように思う。それはかなり残念だった。 不隠さを醸し出しつつ安全な方法があれば良いのだが、 そもそもそれは両立するようなものでは無いのかもしれない、 と、新作を観ながら考えさせられてしまった。

その他にも、ワークショップ向けとも言えるレゴを使った「Weight Scruptures」シリーズの新作や、 過去の映像作品など、小規模な作品もいくつか展示されている。 今までの活動の集大成とも言える展示だ。

会場となったプラザノースは、さいたま市北区の中核となる公共複合文化施設だ。 大型ショッピングセンターに隣接し旧中山道に接している。 その一方で、 最寄りの埼玉新都市交通伊奈線 (ニューシャトル) 加茂宮駅からは徒歩5分なのだが、 その間の歩道もろくに整備されていない。 自動車でのアクセスを前提とした作りも、いかにも郊外という感じだった。 しかし、ショッピングセンターから客が流れてくることもあり、 地元の人を中心に一日1000人近くの観客がギャラリーを訪れるという。 都心で下手に展覧会するよりも集客している。 郊外のショッピングモールの文化というと ヤンキー文化とかケータイ小説とかそういう面が語られがちだけど、 それだけではないのだなあ、と、少々感慨深かった。