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Review: 『ロトチェンコ+ステパーノワ —— ロシア構成主義のまなざし』 Aleksandr Rodchenko & Varvara Stepanova: Visions of Constructivism @ 東京都庭園美術館 (デザイン展/美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2010/05/01
Aleksandr Rodchenko & Varvara Stepanova: Visions of Constructivism
東京都庭園美術館
2010/04/24-06/20 (第2・第4水曜日), 10:00-18:00.

ロシア革命 (1917) から1930年代初頭にかけての芸術運動 Russian Avant-Garde については、 1990年代中頃からそれなりの頻度で展覧会が開催されるようになっている。 去年、かなり充実した展覧会『ロシアの夢 1917-1937』 [レビュー] が開催されたばかりだ。 しかし、グラフィック・デザインや写真の分野で主に活躍した Александр Родченко (Aleksandr Rodchenko) と Варвара Степанова (Varbara Stepanova) の夫妻の回顧展としては、1995年の『ロトチェンコの実験室』 [レビュー] 以来15年ぶりだ。 絵画、線描画、建築、空間構成、デザイン、演劇、印刷物、写真と 幅広い活動をカバーした多くの作品が来ており、初めての人にはもちろんお勧めだ。 自分にとってはさすがに新鮮さは無かったけれども、久しぶりの展覧会、 好みということもあって、充分に楽しむことができた。

今回の展覧会は、モスクワ (Москва, RU) の 国立プーシキン美術館 (Государственный Музей Изобразительных Искусств им. A. C. Пушкина / Pushkin State Museum of Fine Arts) が創設100周年記念しての企画で、 1992年に遺族から寄贈された美術館コレクションと Rodchenko & Stepanova Archives のコレクション (個人蔵) から170点からなる。 『ロトチェンコの実験室』とベースとなるコレクションは同じで、 写真やグラフィック・デザインなど、重なりは大きかった。 しかし、美術館コレクションは500点以上ということで、これでもまだ一部ということだろう。

今回の展覧会では絵画が充実していた。 構成主義の作風以前、革命直前の最初期に書かれた油彩は、 モダニズムな作風とはいえこんな時代もあったのか、と。 ミニマリズムの極北ともいえる Rodchenko の “Гладкий цвет (Smooth colour)” 連作 (1921) は、まさに Супрематизм (Suprematism) 的、 ホワイトキューブに展示した方が映えそうだったのが、少々残念。

自分が見慣れてしまっているということもあると思うが、物足りなかったのは印刷物の展示。 雑誌 ЛефНовый Леф、 あと、Владимир Маяковский (Vladimir Mayakovsky) の本など、 揃って来ているかと期待していたところもあったので、少々残念だった。 ポスターや書籍雑誌などグラフィック・デザインに Rodchenko と Stepanova の構成主義なデザインセンスが最も反映されていたと思うだけに、 ここにもっと力を入れて欲しかった。 そんな中で目を引いた一品は、 Резинотрест (Rezinotrest, ゴム・トラスト) のアラビア文字トルコ語ポスター。 キリル文字のポスターほど自由に文字を配置しておらず、 さすがにアラビア文字の扱いは難しかったのかな、と。

ちなみに、今回の展覧会も、図録の人名、作品タイトル等の表記が日本語と英語のみ。これは残念だ。 せめて固有名詞 (作家名や作品名) くらいはロシア語キリル文字表記も付けることが普通になって欲しい。

Tシャツやトートバックなど、物販のコーナーも充実していました。 といっても、 以前のロシア・アヴァンギャルド関連の展覧会の図録やグッズが売られていた『ロシアの夢』展と違い、 あくまでこの展覧会のグッズのみ。 彼らのデザインは好きなだけに物欲をそそられましたが、 その一方で用いる図版の選択が微妙に自分の好みと違う感じ。 “Источник Знания и Света” (“Source of Knowledge and Light”) という言葉に ГИЗ (GIS, 国立出版社) のロゴを配した Stepanova デザインのポスター (1925) が 以前からとても気に入っているのですが、今回の展覧会でも、この図版のTシャツもトートバックありませんでした。 その代わりに、1925年の L'Art Decoratif 展の際の Рабочий Клуб (Work Club, 労働クラブ) の案内板のデザインを使ったトートバックを買ってしまいました。