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Review: Ex Machina / Robert Lepage: The Blue Dragon @ 東京芸術劇場中ホール (演劇)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2010/11/15
東京芸術劇場 中ホール
2010/11/13. 14:00-15:45.
Premier: La Comète, Châlons-en-Champagne, FR, 2008-04-22.
Text: Marie Michaud and Robert Lepage. Director: Robert Lepage.
Performed by Marie Michaud (Claire Forêt), Henri Chassé (Pierre Lamontagne), Tai Wei Foo (Xiao Ling).
Set Designer: Michel Gauthier; Properties Designer: Jeanne Lapierre; Sound Designer: Jean-Sébastien Côté; Lighting Designer: Louis-Xavier Gagnon-Lebrun; Projection Designer: David Leclerc. Choreographer: Tai Wei Foo.

ケベックのモントリオール (Montreal, Quebec, CA) を拠点に活動 する演出家 Robert Lepage による、2008年初演作品の日本公演だ。 映像や照明を駆使した演出を相変わらず堪能できたけれども、 ストーリーが少々ステロタイプなラブストーリーで薄く感じてしまった。 そんなストーリーだったせいか、以前に観たときより演出もトリッキーに感じるようなことは無かった。 普通に楽しめたけれども Lepage ならもっと何かできるだろうと物足りなく感じた。

舞台は上海、ケベック出身だが上海を拠点とするギャラリスト Pierre (男性)、 そして彼の恋人である中国人若手アーティスト Xiao Ling (女性)、 モントリオールの広告会社の幹部として働く Claire (女性) の三角関係を描いた物語だ。 パンフレットで 松岡 和子 が指摘しているように 『蝶々夫人』、『ミス・サイゴン』の系譜に連なるような組み合わせだ。 西洋人男性 (Pierre) と東洋人現地妻 (Xiao Ling)、そして西洋人の本妻 (Claire) を思わせるような。

このようなオリエンタリズムとジェンダーの観点から批判の多い類型的なプロットは あえて選んだのかもしれないし、 『蝶々夫人』や『ミス・サイゴン』と違い、 最後に Xiao Ling を自殺させずハッピーエンドに近い3通りのエンディングを用意していたのは、 そういったプロットをズラす意図があったのかもしれない。 しかし、用意された3つのエンディングも、 Claire と撚りを戻す、Xiao Ling と撚りを戻す、子供を得る (ことにより亡き父と和解する)、 という Pierre の都合に合わせたもののように感じられた。

そんなストーリーがベタにメロドラマチックに感じたけれども、 映像や照明使いはそれなりに楽しめた。 上下二段に区切った構造で、 横にも4つに区切られ2×4のセルの組み合わせのように使うこともあった。 上段だけ暗転して切り替えたり、 8のグリッドのいくつだけ使ってそこで映像的なシーンを見せたり。 Pierre の家に見立てたときは一階のリビングに二階のロフト寝室のように使い、 街中のシーンのときは、下の段が駅のホームやバーのカウンターのようになり、上の段が屋根や背景のように。 特に Pierre の家の場面での、左上での寝室のベッドと右下のリビングのソファの使い方が気に行った。 しかし、場面転換は比較的単純。 Lepage なら、セルの組み合わせを駆使して場面をトリッキーに転換するようなことをするのではと 期待しながら観ていただけに、少々物足りなく感じてしまった。