1910年代に中欧ハンガリーの Avant-Garde グループ MA 周辺で活動を始め、 1920-1935年はドイツを拠点に Bauhaus などで活動し、 その後、イギリス経由で1937年にアメリカに渡った美術作家・デザイナ László Moholy-Nagy の回顧展だ。 Huttula Moholy-Nagy Collection が展示の中心だが、国内美術館収蔵作品も集められている。 Bauhaus 期を中心とする1920年代のフォトグラム (Photogram)、フォトモンタージュ (Photomontage) あ グラフィック・デザインなどそれなりに観る機会があったもので、新鮮という程では無かったが、 量も多く、見応えのある展覧会だった。
構成主義的はコンポジションやフォトモンタージュももちろん好きだけれども、 1920-35年にかけての作品や関連展示で最も興味を引かれたのは、 映画 Lichtspiel, Scharz, Weiss, Grau (1930) [レビュー, 関連発言] で使われた回転するオプジェ Light Space Modulator (1930s) の復元模型だ。煌めきながら回転する金属模型は、今からすると派手なものとは言い難いが、 当時最新の金属機械からかっこよさだけを抽出したかのようなフォルムと動きは、とても興味深いものがあった。
Lichtspiel, Scharz, Weiss, Grau (1930) の他、 1920s-30sに制作された6本の白黒映画を観ることができたのも収穫だった。 特に、戦間期ベルリンの街の様子を捉えた Berliner Stilleben (『ベルリンの静物画』, 1931)、 ジプシーの生活を収めた Gross-Stadt Zigeuner (『大都会のジプシー』, 1932) は、 スチルでも通用しそうなスタイリッシュな画面のドキュメンタリー映画だった。 DVDを買いたいと思った程でしたが、 十数分の短編一本のみを収録したDVD 1タイトルが1万円近くしたので、さすがに断念。
1910sのハンガリー時代の表現主義的な絵画は、いつもであれば参考資料と思う程度だったろう。 しかし、今回は、河本 真理 『葛藤する形態 —— 第一次世界大戦と美術』 (人文書院, 2011) を丁度読んでいた所。 兵士を描いた素描などに、その本で書かれていた事が繋がり、なるほどと感慨深く観ることができた。 一方、アメリカに移ってからの作品等の展示は、少々蛇足に感じたのも確かだ。