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Review: 宮永 愛子 『そらみみのおすそわけ』 @ CAPSULE (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2011/11/06
CAPSULE
2011/11/03-2011/11/06 (会期中無休), 18:00-20:00.

宮永 愛子 は2000年代に活動を始めた現代美術作家。 ナフタリンで日用品を象った気化して消えてなくなる立体作品、というか、 それをショーケースや古簞笥等に配したインスタレーションが印象に強い作品だ。 今回のインスタレーション『そらみみのおすそわけ』はナフタリンを使わないインスタレーション。 2000年代中頃から同様のインスタレーションを行っていたようだが、今回初めて体験することができた。

10m四方程のギャラリーの中央には腰の高さほどの木製の台が二つ、片隅に膝ほどの高さの台が一つ。 それらの上にはそれぞれ、直径20cm程と少々大きめの貫入青磁釉の陶の平茶碗がのせられていた。 細かくひびの入った青い透明な釉薬の下に白い地が透けて見える。 そんな茶碗を見ながら静かに耳を澄ます作品だ。

静かに耳を澄ましていると、 注意していても隣のカフェの食器の音に紛れて聞き落しかねないほどの微かな響きに気付く。 器にひびくかのようなピーンと高い音のときもあれば、ピキッという鈍い音のときもある。 それは、釉に貫入が入る際に生じる音だ。 数分に一回程度の間隔で鳴るそんな音に静かに聞き入りながら、 自分の感覚を静かにピンと研ぎすましていくよう。

微かな光の煌めきに目を凝らすのではなく微かな音の響きに耳を澄ます、 内藤 礼 の水滴や絹糸を使ったインスタレーション [レビュー] の音版のようなインスタレーション作品だ。

ギャラリーの方に聞いた話では、 展示されていた陶器は窯から出して十日程経った充分に冷えたものとのこと。 貫入青磁釉の微かな響きは、窯からだした直後でだけなく、1年後でも鳴り続けるものということだった。