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Review: じゅんじゅんSCIENCE 『Triptych』 @ こまばアゴラ劇場 (ダンス)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2012/02/26
じゅんじゅんSCIENCE
『Triptych』
こまばアゴラ劇場
2012/02/25. 18:00-19:00.
振付・演出:じゅんじゅん. 音楽: 山中 透.
出演: 森井 淳 (j.a.m. Dance Theatre), キムミヤ, 久井 麻世, 福島 彩子, じゅんじゅん.

約1年のベルリン滞在から戻っての、じゅんじゅん の新作。ベルリンに行く直前の 2010年に観た『Dance in 赤縞』 [レビュー] が良かったので、その後の展開の興味から足を運んだ。 約1時間の作品で、タイトル通り三部構成。 それぞれのパートに、I 総譜 ~score II 人形 ~figure III 反復 ~repetition というタイトルが付けられている。 赤縞のような舞台作りはなく、オープニング以外は映像も使わず、大道具・小道具の類も無しに、 黒塗りの舞台に照明と静かな電子音のみのミニマルな演出。 あまりナラティヴではないミニマルで形式的な作品ながら、不安・不穏を感じる作品だった。

最初のパートでは、2人がお互いに威圧しあうように、もしくは一方がもう一方を威圧するように向き合って、 その組で動き回るような所が印象に残った。 歩きながら二人組を組み替えたり、二人組が空間的には並行して離れた所にいたり、という所など、 じゅんじゅんらしいとは思ったけれども、少々退屈したのは確か。

続くパートは、人形のように止まったパフォーマーをもう一人が動かして作る動き。 2人で始まった最初のうちは抽象的なイメージで、 あるポーズが持ち運ばれて違うポーズに変容する面白さという感じだったのだが、 人数が増えるにつれて、まるで報道写真のワンショットのような —抗議運動における抑圧、暴力、無抵抗、悲嘆などを表しているかのような— ポーズを描くようになっていった。 海外メディア (The Guardian や The New York Times) の報道写真のページを めくって行くような感覚を、 人形の動かすかのような操作でポーズを切り替えて繋いで行くかのような動きで静かに作りだしていくよう。 中山 透 の静かな電子音という音もあり、ピーンとした緊張感も感じる、今回の作品の中で最も良かったところだ。

最後の動きは2人組中心に戻ったが、 最初のパートより動きが速くなりリフトのような縦の動きもあり、ダイナミック。 しかし、第二パートの緊張が解けてしまったのか、印象にあまり残らなかった。

もともと、ex-水と油 の中でもコミカルな作風ではないとは思うが、 第二パートで浮かび上がってきたイメージといい、不安・不穏が生む緊張感が印象に残る舞台だった。