1998年に活動を始めた CommandN が6月に 3331 Arts Chiyoda に新スペース CommandN/SHIFT をオープン。 (といっても、CommandN の代表でもある 中村 政人 が統括ディレクターを努める 3331 Arts Chiyoda は ある意味で CommandN の発展形みたいなものだと思っていましたが。) その第一回の展覧会で日本在住の英国人 Peter Bellars の個展を開催していました。 1990年代末に CommandN や Peter Bellars とそれなりに縁がありましたし、 Bellars の個展も久しぶりということで、 会期末になってしまいましたが、なんとか展覧会に飛び込んできました。
日本の「書」とビデオからなる新作『知への道』は、 抽象表現主義の絵画作家 Jackson Pollock のドキュメンタリー映画 Jackson Pollock 51 (Hans Namuth and Paul Falkenberg (dir.), 1951) [YouTube] のオマージュというかパロディとでもいうもの。 漢字や仮名の読めない「外国人」に、手本だけを頼りに1m×2m大の半紙に毛筆と墨で書を書いてもらい、 その様子を収めたビデオと、仕上がった「書」を展示していた。 ビデオの音楽も Morton Feldman 風。 手本として書かれている内容は、Jackson Pollock の言葉の日本語訳。 手本も草書というかかなり崩して書かれたものであるため、文字の区切りも判然とせず、 立って腰を屈めて筆を振る様子も含めて、その結果としてまるで抽象表現主義のストロークのよう。 全く異なる文脈の行為と仕種をそれに見立てているそのズレや、 意味も判らず筆を揮うコミュニケーション不全の不条理さなどが、 現代美術鑑賞という行為へと跳ね返ってくるようで、 皮肉なユーモアをじわじわと感じさせる作品でした。 以前からフォローしてしてそれなりに知る作家ということもあるかと思いますが [関連レビュー]、 相変わらずの作品だなあ、と楽しめました。
しかし、『秋葉原TV』からもう13年も経つのか (遠い目)。 歳をとるのも早いものです……。
同じ3331内のギャラリーでやっていた展覧会で、 バックグラウンド等はよくわからないで観たのですが、興味を引かれた展覧会。 衛星写真や航空写真を模した空から見下ろすアングルで撮られた写真で 正方形というプリントの形状も、上下左右を強く感じさせないもの。 写真家自身の家族と思われる子連れの親子が映り込んでいるのですが、子供がカメラ目線。 普通はカメラを意識するはずがない衛星・航空写真のアングルと無邪気な子供のカメラ目線のミスマッチに、 単なる衛星写真を模したアングル以上の面白さを感じました。