揮発するナフタリンを素材に日用品を象った立体作品で知られる 宮永 愛子 の個展。 新作展だが、ナフタリン立体作品、道頓堀川の水を蒸発させた作品など、 今まで観たことある作品のヴァリエーションが中心。 とはいえ、底面が白く光るアクリルケースに光る白いナフタリンの彫刻の儚い美しさはあいかわらず。 古簞笥などと組み合わせた作品も観たことがあるが、 むしろシンプルなケースとライティングの方が、 ナフタリンで象っている形の物語が強く浮かび上がってくるようで、良いように感じた。
特に、標本のように蝶を象ったナフタリンをアクリルのケースに入れて 白柱に添うラダーに設置する形で配置した今回の展覧会のタイトル作「なかそら —空中空—」は 抽象的にグリッド化された空間に立体的に蝶を留めいくような面白さがあった。 あと、この展示ではナフタリンの彫刻とケースに付いた結晶を浮かび上がらせる光源として、 無機EL (electroluminescence) シートをアクリルケースの1面に貼って使っていた。 この展示における光源付きアクリルケースの自由度高い配置を実現可能にしたのは、無機ELシートだ。
残念だったのは、会期がはじまったばかりで、まだナフタリン彫刻があまり揮発しておらず、 ケースにもナフタリンの結晶があまり析出していなかった。 きちんとした形をとどめた状態よりも、ある程度形が崩れて、 結晶がケースに多く付いていた方が、ナフタリンの揮発過程がはっきり可視化されて面白いように思う。
今まで観たことが無かったパターンの作品としては、 金木犀の葉12万枚をアルカリで脱葉肉処理で葉脈のみにしたものを繋ぎ合わせて 巨大なタペストリ様にした「なかそら —景色のはじまり—」があった。 一見繊細だけれど規模物量によるインパクトの力技な作品という感じだろうか。