田口 行弘 はベルリンを拠点に活動する現代美術作家。 空間インスタレーションやパフォーマンスからなる work in progress のプロジェクト作品を制作しつつ、 そのプロセスの記録をユーモラスなストップモーション・アニメーション化するという作風で知られる。 今回のプロジェクトは、イタリア人建築エンジニア/デザイナー Chiara Ciccarello との協働。 今年3月に彼女と初の協働プロジェクトとして、ベルリンに田口の自宅を建設したという。
今回は、会場の無人島プロジェクト / SNACの古い木造商店跡の倉庫兼展示スペースを使ったプロジェクト。 元冷蔵庫おぼしき倉庫として使われていた奥のスペースを展示空間とし、 いつもは展示やパフォーマンスに使っている空間に資料類、オフィスや物販スペースとしていた。 そして、その空間を作り変える様子をストップモーションでアニメーション化していた。 会期末ということもあるのか、空間は作り変えをほぼ終えた状態。 相変わらずユーモラスに展開する映像をたのしんだが、 現在進行形の物が取り散らかった状態と、それに至る様子のストップモーション・アニメーション映像、と いう形で観られなかったのは残念。
ストップモーション・アニメーション映像化した最近のプロジェクトもいくつか観ることができた。 最近は、ストップモーションのみではなく、 物が落ちたり倒れたりして物音たてる数秒の動画も使っているよう。 そのような短い動画のみを繫げたものも良いが、 ストップモーションに動画を組み合わせた作品の方が面白かった。 ストップモーションの単調な早送り時間に、実時間進行の映像が挟まることにより、 映像内の時間展開に緩急のリズムが生じるよう。
メインのプロジェクトが現在進行で観られず、会場としてこぢんまりした感もあり、 彼の作品を gallery αM で初めて観た時と比べて物足りなく感じたのは確か。 しかし、ストップモーションに限らない展開も感じさせ、楽しめた展覧会だった。