2012年に新国立劇場で上演した舞台作品 [レビュー] と同タイトル (ただし、フランス語でのタイトルは異なる) の展覧会。 パネル写真やビデオによるコンセプチャルかつスタイリッシュな展示。 プラズマディスプレイ8画面を横に並べて、微速度回転雲台を使って撮影した映像を再構成した映像を 写したインスタレーション “Toposcan” (2013) など、 ストライプに引き延ばされた風景と、通常の同ビデオ、そして、氷付いたかのようにスチル化していく映像が、 右から左へまたその逆へと移り変わっていく様が面白かった。
Roland Barthes の写真論 La Chambre claire (1980) で 論じられている写真作品も、美術館の収蔵作品の中から展示されていた。 それでもう少し作品コンセプトの理解が深まるだろうかと期待したのだけど、 その写真とビデオ作品等との関係は結局掴めなかった。 そういう点で、舞台作品で感じたような、スタイリッシュさの上を主題が上滑りしていくような印象は変わらなかった。
日本の新進の写真家を紹介するアニュアルのグループ展。 去年 [レビュー] が私的な作品が中心だったせいか、 今年はナラティブな作品でも少々観察眼的な対象との距離感が感じられた (特に、糸崎 公朗, 鍛冶谷 直記, 津田 隆志)。 そういう点は悪くないのだが、あまりピンと来なかったのも確か。 むしろ、そういう展覧会全体の傾向から少々浮いた よわよわカメラウーマン日記で有名になった 林 ナツミ の『今日の浮遊』シリーズのインスタレーション的ともいえる大判なプリントが最も楽しめた。