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Review: 『柳瀬 正夢 1900-1945 時代の光と影を描く』 @ 神奈川県立近代美術館 葉山 (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2014/03/24
YANASE Masamu: A Retrospective
神奈川県立近代美術館 葉山
2014/02/11-2012/03/23 (月休), 9:30-17:00.

20世紀前半に活動した美術作家 柳瀬 正夢 の回顧展。 院展で入賞したこともある震災前の油絵画家時代、 村山 知義 らと マヴォ (Mavo) を結成し、前衛運動・左翼運動の文脈で舞台美術や風刺挿絵、ポスターなどを手掛けていた30年代前半まで、 そして写実的風景画に回帰した治安維持法逮捕以降という45年のキャリアを辿る内容。

はやり、1923年頃からの1930年代前半の舞台美術や風刺画を楽しんだのも確か。 震災で画期されるものの、それ以前、村山 知義が『海戦』 (1924) を手掛ける以前に、 表現主義的な舞台美術を手掛けていたことに気付かされたり。 ただ、どちらが突出していたというよりも、そういう時代の空気だったのだろう、とも。

いかにも George Grosz の影響を強く感じる風刺画も楽しんだ。 讀賣新聞掲載の「重役とエイプリルフール」という風刺画 (1934-04-02) など、 登場するのが社員、小使、タイピスト、細君に女給で、最近よく観ている戦前日本映画での様子が思い浮かぶよう。 彼の風刺や作風を楽しんだ、というより、その時代の雰囲気を楽しんだという面も大きかった。 この諷刺画は治安維持法違反逮捕の釈放後のもので、諷刺画を全く止めたわけでは無かったようだ。

『讀賣サンデー漫画』掲載の「金持ち教育」 (1930-10-26) では、 柳瀬 の作品よりも、 それに並んで掲載されていた 東郷 青兒 「1940年代型のモダンガール」 (コートの下は裸の娼婦風に描かれている) の方にウケてしまった。 一昨年の 村山 知義 展 [レビュー] でも 風刺画は面白かったし、 『ワイマール時代の諷刺画』 (Kritische Grafik in der Weimarer Zeit, 町田市立国際版画美術館, 1999) [レビュー] の日本での対応物のような、 この頃の風刺画を集めた展覧会を観てみたくなった。