スペインのカスティーリャ・イ・レオン州レオン (León, Castilla y León, ES) に2005年に開館した現代美術館 MUSAC (Museo de Arte Contemporáneo de Castilla y León) のコレクションに基づく、 スペイン及びラテン・アメリカの現代美術の展覧会。 「驚くべきリアル」というテーマはあるものの強く方向付けられてはおらず、 ジェンダーやアイデンティテイをテーマとし映像やインスタレーション、プロジェクトのドキュメント等の形式をとった、 いかにも1990年代以降らしい現代美術のショーケースだった。 (コレクションは1980年代初頭以降だが、東欧革命の1989年をコンセプト上の開始点としているとのこと。) 50作家と規模が大きく、個々の印象が薄くなってしまったが、その中で印象に残った作品について。
中でも最も印象に残ったのは、1992年以来スペイン在住という Kaoru Katayama [片山 薫] の “Technocharro” [Vimeo]。 カスティーリャ・イ・レオン州サラマンカ (Salamanca) の伝統舞踊のグループに、 衣裳は伝統舞踊のままに、techno のDJに合わせて踊ってもらうというもの。 展示は壁掛け液晶ディスプレイで音声はヘッドホンだったこともあり、 映像だけ見ると伝統的な音楽で踊っているかのようであり、音を聴くと techno というギャップが可笑しかった。
Virginia Woolf のエッセイ A Room of One's Own (1929) で引用されている音楽評論家の言「女性が作曲することは犬が後ろ足で歩くことに似ている」にインスパイアされた Christina Lucas の短編映像作品 “You can walk too” (2006) も、そのコンセプトというより、それを映像化する少々馬鹿げたユーモアのセンスが良かった。
比較的若手に焦点を当てて取り上げる東京都現代美術館のアニュアルのグループ展。 この展覧会を観るとそう感じることが多いのだが、今回も、 雑然としたパワーを感じるものではなく、主張も控えめなすっきり落ち着いた展示が楽しめた。 そのようなディレクションがされているのか、東京都現代美術館の展示室の明るさや広さのせいなのか。 狭いギャラリー空間や古い建物でのインスタレーションでは雑然と増殖していくような力を感じる パラモデルのプラレールを使ったインスタレーション[関連レビュー]ですら、 すっきりとした抽象絵画のよう。それがちょっと意外で面白かった。
宮永 亮 の新作 “WAVY” (2014) は、レイヤーを重ねてゆらめくようなテクスチャとなった風景映像という点では、 以前に観たもの[レビュー]の変奏。 しかし、高速道路を走る車の車窓の風景のような都会的なイメージではなく、 大規模農園のような風景なども用いて、テクスチャがより多様になったように感じた。 また、雨粒が水面に作る波紋を使って文字を浮び上がらせる “Rainy Letter” (2008) は初めて観たのだが、 この作品にゆらめくテクスチャのルーツを見るようだった。