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Review: Zimmermann & de Perrot: Hans was Heiri @ 東京芸術劇場プレイハウス (サーカス)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2014/05/11
東京芸術劇場 プレイハウス
2014/05/10, 13:00-14:30.
Conception, mise en scène et décor: Zimmermann & de Perrot; Composition musique: Dimitri de Perrot; Chorégraphie: Martin Zimmermann.
Créé avec: Tarek Halaby, Dimitri Jourde, Dimitri de Perrot, Gaël Santisteva, Mélissa Von Vépy, Methinee Wongtrakoon, Martin Zimmermann.
Production: Verein Zimmermann & de Perrot. Première 2012-01-17.

コンテンポラリー・サーカスの文脈で主に活動するスイス・チューリヒの演出・振付家チーム Zimmermann & de Perrot が、昨年に続いて今年も FACT/FASTIVAL で来日。 去年の Chouf Ouchouf も良く[レビュー]、 今回の新作も London International Mime Festival 2013BAM Next Wave 2013 に参加した作品ということで期待が大きかったが、 それを裏切らない舞台が楽しめた。

パフォーマーは男性5人に女性2人。うち男性1人 (de Perrot) は音楽担当のDJ。 男性4人はいずれも軽業もこなすクラウンとでもいう役回り。 小柄な女性 Methinee Wongtrakoon はコントーション (軟体芸) を得意技とし、 大柄な Mélissa Von Vépy はコントーションもするがむしろエアリアル (空中芸) を得意とするよう。

舞台奥に高さ幅約2mの正方形の部屋4部屋が田に字状に2×2で配置されたものが置かれている。 これが四つの小部屋が接する軸で縦方向に回転するようになっている。 壁や天井が床となるよう様々なスピードで回転する部屋を駆使してのバフォーマンスだ。 といっても、傾いた部屋でおどけた動きをしたり、 回転する部屋の中で床から壁、天井へと移りつつマイムやダンスを繰り広げるだけではない。 部屋を繋ぐ扉や奥に消える出入り口や窓、その手前に付けられたポールやバーも駆使して、 アイデア溢れる動きを楽しませてくれた。

客席に向いた田の字の枠にはそれに沿ってポールが付けてあり、また外周にあたる一つの角には舞台手前方向にバーが突き出している。 そんなポールやバーを使い Von Vépy がチャイニーズポールやトラペーズ (空中ブランコ) で使うような技を見せたりもした。 彼女は大柄で手足が長く綺麗なだけに、その動きも印象的だった。 一方、コントーション的な動きを駆使して小柄で丸い体型がフロアを転がり跳ねるような Wongtrakoon のダンスも良かった。

男性パフォーマーは4人は技よりキャラクターが立っていた。 Kippah (ユダヤ帽) か Taqiyah (イスラム帽) のような帽子をかぶった振付担当の Zimmermann の 回転する部屋の外側を使ったダイナミックでスリリングな動きも良かった。 しかし、特に印象に残ったのは、眼鏡にチェックのシャツ、パンツにジャケット姿の Gaël Santisteva。 白髪混じりにした髪や髭もちょっとボケたインテリの初老の男のような役で、 その外見からは意外な身体能力を見せる所が面白かった。 実は、Santisteva は1977年生まれで、1970年生まれの Zimmermann よりも若かったりするのだが。

音楽は abstract hip hop か electronica といったものだが、 録音されたものを流すのではなく、舞台袖にDJブースを置き、そこで de Perrot がライブで音を作っており、 舞台や観客席で生じた音をサンプリングして使ったりもしていた。 また、男性パフォーマーたちは歌のスキルも持っていて、時に民謡的な合唱を、時にソウルフルな歌を聴かせたりもした。

技そのものを見せるような場面はほとんど無く、かといって判り易いストーリーも無かったが、 縦回転する部屋をアイデアの鍵にしつつ、多様な動きで1時間半近く楽しませてくれた舞台だった。

TACT/FESTIVAL 2013 は Zimmermann & de Perrot: Chouf Ouchouf と Corpus: Mouton だけと小規模な開催だったが、 今年は Cie L'Immédiat / Camille Boitel: L'Immédiat [レビュー] 等もあり、規模が拡大した。 子ども向けのパフォーマンスのフェスティバルということではあるが、 大人が楽しめるコンテンポラリーなサーカスやマイムのようなフィジカル・シアターの招聘枠として期待したい。