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Review: 『発掘された映画たち2014: 12 個人映画特集1: 森紅作品集』 (映画); 『発掘された映画たち2014: 13 個人映画特集2: 荻野茂二作品集』 (映画)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2014/10/15

東京国立近代美術館フィルムセンターで特集上映 『発掘された映画たち2014』の 個人映画特集2プログラムを続けて観てきました。

無声 / 白黒 / 76 min.
監督: 森 紅.
『ヴォルガの船唄 扇光樂』 (1932); 『タバコの煙』 (1933); 『旋律』 (1933); 『千鳥の曲』 (製作年不詳); 『奔流』 (製作年不詳); 『臺所の戯曲』 (1935); 『遺訓によりて』 (1937); 『童話劇 伯母さまの冗談』 (製作年不詳); 『人騒がせ』 (製作年不詳); 『花にうかれて』 (製作年不詳); 『競馬放送』 (1931); 『晩秋の古都』 (製作年不詳).

森 紅 (b. 森 博, 1985-1941) は戦間期の大阪で活動したアマチュア小型映画作家。 1922年発売の9.5mmフィルムの Pathé Baby を1925年頃には入手し、 1928年頃に製作された『童話劇 伯母さまの冗談』がデビュー作という。 大阪のアマチュア小型映画シーンの中心的な存在だったとのこと。

アマチュア映画団体では劇映画を取ることが多かったとこのとで、 『童話劇 伯母さまの冗談』や『遺訓によりて』などの劇映画もありましたが、 やはり、純粋映画的な抽象的な作風のものの方が好みでした。 『ヴォルガの船唄 扇光樂』、『旋律』、『千鳥の曲』のような抽象アニメーションは、 上映といっしょに再生するSP盤の指定があるとのことで、 Björk: Biophilia (2011) の iOS App でやっていることを 非常に素朴な形で製作したもののよう。 ただ、昼食のオムレツを準備する台所の様子をリズミカルに捉えた『臺所の戯曲』や 渓流の水の流れを抽象的な光の煌めきの映像としたような『奔流』など、 抽象的な実写映像の方が、面白く思いました。

無声 (一部トーキー) / 白黒, カラー / 87 min.
監督: 荻野 茂二.
『智慧の登山』 (1931); 『SCREEN GRAPH オール・ニッポン』 (1937); 『時計』 (トーキー版, 1963); 『日本橋』 (1964); 『都電60年の生涯』 (1967); 『スト決行中』 (1975).

東京の、そして日本で最も知られたアマチュア小型映画作家 荻野 茂二 の特集上映。 先日の『戦前日本SF映画小回顧』で初めて観て [レビュー]、興味を持ったところだったので、 国内外のコンテストで数多くの賞を取っていた戦間期から、むしろアマチュア小型映画の指導者的な立場となった戦後まで、 その長いキャリアの様々な時期の様々な作風の作品を観ることができて、とても勉強になりました。 『戦前日本SF映画小回顧』で観たような純粋映画やアートアニメーションのような作品ばかりではなかったのだということを知る事ができました。

『智慧の登山』 (1931) のような子供たちが科学的な知恵を生かしながら登山する様子をコミカルに描いた映画も好きですが、 はやり、『時計』や『日本橋』のような抽象的な作風の方が好みでした。 『日本橋』は首都高速が走る前、工事中、首都高速が空を覆った後の東京の日本橋を捉えた作品ですが、 撮影年月の字幕が入るだけの白黒の淡々とした描写は、むしろ、 「サイト・グラフィック」的な風景写真 [レビュー] の映像版を見るよう。 『都電60年の生涯』や『スト決行中』となると、カラーということもあるが、 説明的な新聞記事やTV画面などが挟まるせいか、ぐっとナラティヴになったようにも感じました。

ところで、森 紅 が『私の子供』 (1934) をエントリーした1935年のバルセロナ国際小型映画コンテストには、 荻野 茂二 も『開花』、『表現』、『リズム』をエントリーしています。 船便が遅れて間に合わず、代わりにブダペストでの国際コンテスト「サン・テチアンヌ杯」にエントリーしたという経緯があるようですが。 日本において戦間期のアヴァンギャルドな純粋映画を担っていたのは、 荻野 茂二 や 森 紅 のようなアマチュア小型映画作家だったのだなあと感慨深いものがありました。 その一方で、荻野 茂二 や 森 紅 が出展したような国際小型映画コンテストに、 日本以外からはどんな映画がエントリーしていたのかが、気になりました。 ヨーロッパでも、アヴァンギャルドな美術作家の製作した絶対映画以外にも、 アマチュアの小型映画の中に実験的な映像があったりするのかもしれません。

森 紅 の解説を担当した 松谷 容作 氏 (神戸大学大学院人文学研究科研究員) によると、 関西での上映会の3回分の観客で東京ならでの集客とのことですが、 100名弱ということで、大ホールでは空席の目立つ客の入り。 続く 荻野 茂二 も同じ程度。 『3 発掘されたアニメーションと戦前時代劇』の集客を思い出すと、 満席の大入りだった前日の『2 複数バージョン特集2――関東大震災の記録映画』が、 集客面で突出していたということでしょうか。 それだけの差が付く程の特別なものがあったとは思えません。解せぬ。