1950s-1960sに Royal Shakespeare Company で活動し、 1970s以降フランス・パリの Théâtre des Bouffes du Nord を拠点に活動するイギリスの演出家の舞台。 といっても、生で観るのは初めて。 Brook 演出の舞台というよりも、Théâtre de Complicité [関連レビュー] の創設者の一人 Marcello Magni と、 やはり、元 Complicité で一人芝居 Kafka's Monkey [レビュー] が出演するということで、 フィジカルな表現を効果的に使った舞台を期待して、足を運んでみました。
物語は、単語に関する共感覚のおかげで並外れた記憶力を持つ女性 Samy Costas が主人公。 その能力を買われてバラエティショーに出るようになるが、忘れることができないため、 覚えた単語などから生まれたイメージに押しつぶされそうになる、という。 超能力を持つ者が超能力ゆえに苦労したり不幸になるという物語はSFにありがちなプロット。 むしろ、それをいかに舞台の上の表現とするかがポイントだと思うですが、予想以上に台詞主導の演出。 そんなこともあって、Samy を演じる Hunter の動きは Kafka's Monkey 程ではありませんでした。 他に数人、特殊な共感覚を持つ者が登場する中では、 視線で操らないと身体が動かせない男を演じる Marcello Magni が最も楽しめました。
舞台道具も方形の敷物に数脚のシンプルな椅子や机程度。 2人のミュージシャンが生演奏する音楽も音数は控えめ。 照明を中心としたミニマルな演出には洗練を感じましたが、もう少し動きある舞台を観たかったな、と。
この公演は FESTIVAL/TOKYO 2014 のプログラムの一つで、実は、自分にとっての開幕公演。 自分の中では盛り上がりに欠ける今年のF/T。 この The Valley of Astonishment も Complicité 人脈の舞台で、野田 秀樹 / 東京芸術劇場の通常営業のよう。 F/Tのプログラムとしてやる意義をイマイチ見いだせませんでしたが、おかげでチケットが安くなったと思うので、その点はありがたいものです。