あらすじ: 初老のサラリーマン福島には娘三人に年の離れた息子がいる。 長女は医者と、次女は画家と結婚し、三女も軍人と結婚式をあげ、ほっとする間も束の間、 五十の時に産んだ小学生の息子のことを思い出し、愚痴を溢す。 福島は妻に息子が可愛くないのかと責められ、出て行けと言ってしまう。 妻は息子を連れて家を出て次女の家を頼る。 福島は飲み歩くが、憂さは晴れない。親戚や三女の仲人も、妻に家に戻るよう説得する。 そんなことも知らず、息子は学校帰りに父の家に帰り、あっさり父と仲直りしてしまう。 三女が新婚旅行から戻る前にと、妻も急いで家へ戻るのだった。
父に「お荷物」扱いされてもグレずに素直で、あっさり仲直りするのもご都合主義とは思いますが、 「お荷物」扱いしてた息子との和解の場面、二人の演技も良く、これもありかなと。 坪内 美子 演じる和装でおっとりした長女と田中 絹代 演じるモダンでちゃっかりした次女という対称的な二人のやりとりも面白いし。 悪気のない人ばかり登場する和やかな笑いのホームドラマでした。
あらすじ: 田園調布の横山氏は妻に頭が上がらない恐妻家。 面識は無いが同じ社交クラブに出入りしている麹町の川田氏も恐妻家だった。 ある日、横山夫人のふみ子がデパートで買物しているとき、通りがかった川田氏がちょっかいを出した。 そこに川田夫人のみつ子が現れ、夫が遊びに行く店の水商売女と勘違いして、ふみ子夫人を侮辱する。 横山氏は復讐するよう夫人にけしかけられ、川田氏も受けて立つよう夫人にけしかけられ、二人は決闘する羽目になる。 自分は闘いたくないため二人は代役を立てるが、代役の二人も互いがそうと気付いて決闘は回避される。 決闘したことにして横山氏と川田氏がそれぞれ家に戻ると、妻の態度はすっかり軟化していた。 その後、社交クラブで横山氏と川田氏は挨拶を交わすことになり、 二人とも妻に言われて仕方なく決闘することになり、回避するため代役立てたことを知る。 意気投合した二人は、呑み遊び歩くが、ふと妻の事を思い出し憂鬱になるのだった。
小津 安二郎 『淑女は何を忘れたか』 (松竹大船, 1937) [鑑賞メモ] で助監督と務めた 澁谷 實 が直後に撮った監督デビュー作。 『淑女は何を忘れたか』と似たような雰囲気の恐妻コメディで、 斎藤 達雄 も 坂本 武 も妻に頭上がらない男がハマるなあ、と、つくづく。 飼っているオウムにすら馬鹿にされたり、罰にコップの水の移し替えを二時間させられたり、と、恐妻の笑いは『奥様に知らすべからず』が上。 しかし、『淑女は何を忘れたか』での節ちゃん (桑野 通子) のような登場人物がいないのが、なんといっても物足りません。
ノンクレジットのちょい役ですが、バーの女給の役で 香取 千代子が出演。 脇役ちょい役ばかりの女優ですが、飄々としてちょっと気の強そうな雰囲気があって、実は、かなりお気に入り。 やっぱり、成瀬 巳喜雄『限りなき舗道』 (松竹蒲田, 1934) [鑑賞メモ] での袈裟子のイメージ強いからでしょうか。