TFJ's Sidewalk Cafe > Dustbin Of History >
Review: 『さらば、愛の言葉よ』 Jean-Luc Godard (dir.): Adieu au Language (映画)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2015/03/01
2014 / Wild Bunch (France/Suisse) / 70min / 3D / color.
un film de Jean-Luc Godard.

Jean-Luc Godard の初めての3D映画は、 明確に物語らずに警句的な言葉と隠喩的なイメージを連鎖していく所は相変わらず。 3Dならではの映画表現という意味では、3Dである必然をほとんど感じない映画でした。

露出が狂ったような白く抜けた、もしくは暗い画面は、そもそも立体感に乏しい。 粗くしたり彩度を強調するような手法はテクスチャとしての画面を強調するだけに、3Dにする効果は低いのだと実感。 室内の場面などは確かに3Dに見えるのですが、語り口が2Dの時と相変わらず。

最も Godard らしいと感じた3D表現は、時折挿入される字幕画面で赤文字を手前に浮かび上がらせた所でした。 また、カメラをパンする場面で左右のカメラをズラして動かしてオーバーレイ画面のようにしたり、 左右のカメラの間隔を広げて奥行き方向を伸ばした画面を作ったりした所に、 3Dを異化するかのような実験を感じました。

しかし、Godard のような映画表現は、既に自然となってしまった映像表現の自明性に揺さぶりをかけるのには適しているかもしれないけれど、 まだ3Dならではの映像を試行錯誤している段階のものに対しては、有効性は低いのかもしれません。

3D映画を観るのも、Win Wenders (dir.): Pina (2011) [鑑賞メモ] 以来3年ぶりでしょうか。 その前にも Werner Herzog (dir.): Cave of Forgotten Dreams (2010) [鑑賞メモ] を観ている程度ですし。 こういう映画を観る前に、3D映画の王道とでもいう映画を少しは観ておいた方がいいのだろうなあ、と思うことしきりでした。