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Review: 『山口小夜子——未来を着る人』 @ 東京都現代美術館 企画展示室地階 (美術展); 『他人の時間』 (Time Of Others) @ 東京都現代美術館 企画展示室一階 (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2015/06/14
Sayoko Yamaguchi —— the Wearist, Clothed in the Future
東京都現代美術館 企画展示室地階
2015/4/11-2015/6/28 (月休;5/4開,5/7休), 10:00-18:00.

1970年代から1980年代にかけてパリ・コレクション等のファッション・モデルとして活躍したファッション・モデル 山口 小夜子 の展覧会。 自分にとっては、やはり、この時代のファッション・モデルとしての印象が強く、 1980年代後半以降のパフォーマーとしての活動はほとんど自分のアンテナのそとだったのだなあ、と気付かされた展覧会でした。 いささか、神格化過ぎに感じて引くところもありましたが、個人に焦点を当てる回顧展で、 かつ、絵画や音楽のような形で作品を残すわけではないので、仕方ないでしょうか。

山口 小夜子 がモデルとして活躍しはじめた1970年代は、 オートクチュール (高級仕立服) に代わりプレタポルテ (高級既製服) が台頭してきた時代。 その中で 日本人デザイナーもプレタポルテのコレクションへ進出していくのですが、山口 小夜子 もその文脈に乗る人だったのだなあ、と。 そういえば、彼女のイメージは、高田 賢三、コシノジュンコ、山本 寛斎 の世代の服で、 川久保 玲 や 山本 耀司 のような服を着ているものではありません (着たことはあったのかもしれませんが)。

1980年代以降、パフォーマーとしてコラボレーションしたとして取り上げられていたのは、 天児 牛大 / 山海塾, 勅使川原 三郎 / KARAS, 江戸糸あやつり人形 結城座 に 佐藤 信。 自分の場合、2000年代に入ってからの 生西 康典 & 掛川 康典 (映像) と 八木 美知依 (箏) との コラボレーションをかろうじて観ている程度 [関連レビュー1, 2]。 台詞のある演劇も含めいろいろやっていた事に気付かされました。 舞踏との共演の写真はさすがに他で観た覚えがありましたが、 彼女の化粧は舞踏と相性いいものだったのだなあ、と改めて気付かされました。

ファッション・モデルとして一線を退いた後に、映画・テレビのドラマ俳優やバラエティ芸人のような方向ではなく、 舞台芸術の方 (それも商業演劇ではなく) へ行ったことが、このような展覧会向きの経歴を残すことになったのでしょう。 色や形の実験色濃い造形的なファッションにも負けなかった彼女の顔立ちや雰囲気は およそテレビ・映画のドラマ向きではなかったとは思いますが、 それだけではく日本においてハイ・ファッションが影響力を持っていた時代だったから、 そのモデルと舞台芸術との共演が成立した、と感じるところもありました。

Time Of Others
東京都現代美術館 企画展示室一階
2015/4/11-2015/6/28 (月休;5/4開,5/7休), 10:00-18:00.
Kiri Dalena, Graham Fletcher, Saleh Husein, Ho Tzu Nyen, Lim Minouk Jonathan Jones, On Kawara [河原 温], An-My Lê, Basir Mahmood, mamoru, Miyagi Futoshi [ミヤギフトシ], Pratchaya Phinthong, Bruce Quek, Shitamichi Motoyuki [下道 基行], Natee Utarit, Vandy Rattana, Võ An Khánh, Danh Vo.

東京都現代美術館、国立国際美術館、シンガポール美術館 (Singapore Art Museum)、クイーンズランド州立美術館|現代美術館 (Queensland Art Gallery / Gallery of Modern Art) の共同企画によるアジア・オセアニア地域の現代美術展。 1名パキスタンの作家がいますが、東アジア、東南アジアとオーストラリア、ニュージーランドが対象地域といっていい内容。 形式的というよりナラティヴ、それも寓意的に描くというより、取材に基づくドキュメンタリ的な作品が目立つ展覧会でした。 しかし、そうであればそれだけ、こういう問題を理解するなら美術なんていう手段を採らない方がいいのではないか、と思ってしまうかのような展覧会でもありました。

混雑しているうえ映像も多く『山口小夜子——未来を着る人』で予想以上に時間を取ってしまい、 『トーキョーワンダーウォール 公募2015 入選作品展』は流す程度。 『MOTコレクション特別企画 コレクション・ビカミング』を再見する時間もありませんでした。残念。