5つの国立美術館 (東京国立近代美術館, 京都国立近代美術館, 国立西洋美術館, 国立国際美術館, 国立新美術館) の共同企画によるコレクション展。 美術館の機能、構造に関わる36のキーワードを英語で辞書順に並べて、 そのキーワードの説明をそれに関わる作品を交えつつ説明するというもの。 項目が日本語ではなく英語の辞書順だというのは、美術館に関する諸概念の欧米由来ということの反映でしょうか。 近代的な美術館という制度をその来歴から辿る内容が充実する一方、例えば「インターネット」の項などさらりと流すような構成で、 どうして「これからの (to come)」なのかは納得いかなかったものの、教育的でよく出来た展覧会でした。 しかし、こういうメタな視点の展覧会をありがたがってしまうというのも、またちょっと違うような……。
1970年代の日本の写真の動向を、「物事」をキーワードに、同時代の美術運動である もの派 などろ関係付けつつ辿る展覧会。 この時代は、1968-1970年に活動した雑誌『プロヴォーク』の影響で、「アレ、ブレ、ボケ」の呼ばれるような不鮮明なスナップ写真の時代という印象が強いのですが、 むしろ、そこから即物的な写真に回帰するような傾向に焦点を当てた展覧会でした。 大辻 清司 [レビュー] は『プロヴォーク』と関係なくそうだったし、 高梨 豊 [レビュー] あたりも納得の選択ですが、 中平 卓馬 が Eugène Atget や Walker Evans に触発され、 「アレ、ブレ、ボケ」と決別する『なぜ、植物図鑑か——中平卓馬映像論集』 (晶文社, 1973) を出版していたと知ったのが収穫。 『プロヴォーク』のエピゴーネンが溢れた時代としてではなく、post-プロヴォークとしての1970sを意識することができた展覧会でした。