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Review: 『筑波大学〈総合造形〉展』 @ 茨城県立近代美術館 (美術展); 石川 直樹 『この星の光の地図を写す』 @ 水戸芸術館現代美術ギャラリー (写真展); 『水戸芸術館ライトアッププロジェクト』 @ 水戸芸術館 (インスタレーション)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2017/01/09
『筑波大学〈総合造形〉展』
茨城県立近代美術館
2016/11/03-2017/01/29 (月休; 1/2,1/9開; 12/29-1/1休; 1/3,10休), 9:30-17:00.
三田村 畯右, 山口 勝弘, 篠田 守男, 河口 龍夫, 河口 洋一郎, 國安 孝昌, 逢坂 卓郎, 村上 史明, 小野 養豚ん, 佐々木 秀明, 岩井 俊雄, 明和電機 (土佐 信道), クワクボリョウタ, 寺田 真由美, 林 剛人丸.

東京教育大学から筑波大学への改組移転に伴い1975年に創設された 筑波大学 芸術専門学群 総合造形領域 の展覧会。 領域を方向付けた創設初期の4教員、その後の現在に至る5教員の作品と講義に関する資料の展示、 そして、卒業生で作家として活動している6人の作品展示からなる展覧会でした。 美術館・ギャラリー巡りして現代美術をよく観るようになった1990年代、 写真、光、ビデオや音響を使ったインスタレーションやユーモラスで遊び心あるジェットのような立体作品を得意とする作家といえば筑波の総合造形出身という印象が強かったこともあり、 特に前半の展示を、そのような作家を多く排出した背景として興味深く観たのは確か。

しかし、最も楽しめたのは、やはり、卒業生の6人の作家による作品展示でした。 たとえば、佐々木 秀明 『雫を聴く』 (2016) は、水滴で透明なボウルに張った水を揺らがせ、それで光を揺らがせるインスタレーションですが、 雫の音、ゆらぐ光のインスタレーションというだけでなく、水滴を落とす装置、受けるボウル、光源、光を受けるスクリーンを一体とした装置の造形もスタイリッシュ。 寺田 真由美 は初めて意識して観たが、ゼラチンシルバープリントの大判の写真シリーズも構成的な画面作りも、 大辻 清司 [レビュー] に連なる筑波らしい写真で、気に入りました。 クワクボリョウタ 『10番目の感傷(点・線・面)』 (2010) [レビュー] は、度々観る機会がありましたが、この良さも再び体感することができました。

21世紀に入って現代美術は work in progress のプロジェクトやその記録をインスタレーションとするものが多くなっています。 卒業生の作品に観られたように、写真、光、ビデオや音響といったメディアをスマートに使った造形の面白さが、自分の好みなのだとつくづく実感した展覧会でした。 しかし、教員の展示を観ると、最近は総合造形の講義においてもそのようなものに取り組みつつあるようにも伺われ、 変わりつつあるのかもしれないなあ、と、感慨深いものがありました。

Naoki Ishikawa: Capturing the Map of Light on This Planet
水戸芸術館 現代美術ギャラリー
2016/12/17-2017/02/26 (月休; 12/26-1/3休; 1/9開; 1/10休), 9:30-18:00.

極地や高山などの極限的なフィールドに赴いての撮影で知られるようになった写真家 石川 直樹 の個展。 前半の、極地や高山で撮影された大判の風景写真は、かっちりした構図に抽象画のような落ち着きもあり、 単なる冒険写真にとどまらない、フォーマルでコンセプチャルな写真にも感じられました。 しかし、後半、日本周辺の島々や福島で撮影された写真となると、そういう形式性が薄れ、むしろ何を撮るかに関心が移ってしまったようでした。

水戸芸術館 広場
2016/10/29-, 17:00-22:00 (秋冬), 18:00-22:00 (春夏)
デザイン・監修: 逢坂 卓郎.

水戸芸術館のタワーのライトアップは昔から行われていたが、 去年の10/29から「水戸芸術館ライトアッププロジェクト」として 逢坂 卓郎 のデザイン & 監修によるライトアップとなっていました。 以前のライトアップが見慣れてしまっていたせいか、地味な記憶しかなかったので、時間変化するカラフルなライトアップに華やかさを感じました。 といっても、ショッピングモールの照明のような賑やかささとは違う落ち着きも感じられる色合いや変化のスピードでした。

ちなみに、デザイン & 監修の 逢坂 卓郎 は、 『筑波大学〈総合造形〉展』で取り上げられた教員の一人。 連動した企画ではありませんでしたが、関連展示を観るような絶妙さを感じました。

かつては年に1回は行っていた水戸芸術館ですが、最近はめっきり足が遠のいてしまい、 4年ぶりでしょうか。 1990年代は東京駅発の高速バスで行ってましたが、腰を悪くして以来、上野駅から常磐線の特急で。 今回は、常磐線が品川駅まで乗り入れるようになって初めて。 上野駅へのアクセスがイマイチなだけに、品川駅から一本で水戸駅まで行けるようになり、 実際の距離や所要時間、料金は別として、逗子駅からバスに乗らなくてはならない 神奈川県立近代美術館 葉山 よりも体感的に近く感じられました。 少しは水戸へも行くようにしようかしらん、と。