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Review: タムラサトル 『バンバンバンバンバンバンバンバンバンバン』 @ nap gallery (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2017/03/12
『バンバンバンバンバンバンバンバンバンバン』
Satoru Tamura: Bang Bang Bang Bang Bang Bang Bang Bang Bang Bang
nap gallery (アーツ千代田3331 2F)
2017/02/10-03/11 (月火祝休), 12:00-18:30 (木12:00-21:00, 日予約のみ).

タムラサトルは1990年代半ばから活動する現代美術作家。 社会的な意味が取り去られた、機械的な動きの持つ迫力・面白さそのものに焦点を当てた立体作品が作風だ。 好きな作風ということもあり2000年代まではよく観ていたが、 最近はギャラリー巡りの頻度が落ちてしまい、個展を観るのは2011年 [レビュー] 以来久しぶり。

今回出展されていた新作『10回たたく#1』は、 案内状に「木の角棒で鉄板を10回たたくだけの装置」とあったので、 数センチ程度の「角棒」がくるっと回ってて「鉄板」をカンカンと叩くような装置を予想していた。 しかし、実際は、鋼材で作られた高さ1.5mくらいのの台の上に並んだ10cm角で長さ180cmはあろう「角材」が10本と、 壁に掛けられたおよそ1m×3m大の数ミリ厚の「鋼板」。 鋼板は壁にべったりではなく、鋼材で作られた枠で壁から浮かしてある。 電源が入ると、10本の角材がアクチュエータで順に水平に動ごき、鋼板を突いていく。 突く度に鳴る音は、タイトルの Bang「バン」では生易しく、「ガーン」と鳴り響く音だ。 角材と鋼板、アクチュエーターなどの組み合わせも素材むき出しの無骨さで、 その角材で鋼板を叩くというその迫力が、ミニマルに提示されている。 そんな無骨さと迫力が堪能できる作品だ。 角材10連装の作品は見た目も迫力あるが、そのコンパクトなバリエーションとして 1本の角材で10回続けて鋼板を叩く装置も2台展示されていた。

タムラサトルの作品は、迫力を追求するあまり、危険で迷惑になりがちだ。 この『10回叩く』も、角材と鋼板の間に指なぞ挟んだら大怪我だし、 動作さればギャラリーだけでなくギャラリーの入った建物全体に響き渡らんほどの大音響。 装置を動作させ続けるわけにいかず、来廊する人のリクエストで動作させていた。 この作品の美術館での動態展示も、 『小山マシーン』 (小山市立車屋美術館, 2010) [レビュー] のような個展であればなんとかできそうだが、 グループ展の場合は難しそうだ。