神保町シアターのゴールデンウィーク特別興行 『映画監督・成瀬巳喜男 初期傑作選』から、 1930s前半松竹蒲田時代のサイレント映画2本を 天池 穂高 のピアノ生伴奏で観てきました。
1本目は『限りなき舗道』 (松竹蒲田, 1934)。 以前に観たときは、戦間期モダンな銀座の街並みを目当てに観たせいか、テーマは少々保守的に感じられました [レビュー]。 しかし、今回は『女人哀愁』 (PCL=入江ぷろだくしょん, 1937) を観たばかりということもあってか [レビュー]、 不幸な格差婚からの自立というテーマがすっと入ってきました。 杉子の芯の強さ、というか、演じる 忍 節子 の 入江 たか子 にも劣らない秘めるような強さ美しさに気付かされました。
忍 節子 って、坪内 美子 と同系の、洋装美女に見劣りしないモダンなセンスを感じる和装美女だななあ、と。 個人的な好みをいえば、忍 節子 よりも 香取 千代子 ですが。
2本目は、初めて観たこの作品。
夫と娘を捨ててアメリカで女優として成功した 珠江 は、娘 滋子と再会するため日本へ戻ってきた。 事業に失敗して追い詰められていたかつての夫、渥美に珠江は融資を申し出るが、拒絶される。 渥美は破産し屋敷は他に渡りさらに不正により投獄されてしまい、後妻 真砂子 はデパートの売り子をしながら継子 滋子、義母 岸代 と細やかな一軒家暮らしを始める。 貧乏暮しを嫌う義母は、珠江の誘いに乗って、滋子を連れて珠江の屋敷へ行ってしまう。 真砂子は滋子を取り戻そうと、渥美の旧友 日下部を頼り、珠江の家へ行くが追い返されてしまう。 滋子は珠江に懐かず、屋敷を逃げ出そうとして、自転車に轢かれてしまう。 滋子が臥せていると日下部から知らされ、真砂子は珠江の屋敷へ忍んで行き再会するが、見つかって、引き離されそうになる。 しかし、真砂子と滋子の仲を見て、珠江は滋子を真砂子に任せることにし、アメリカで築いた財産を滋子に残して、アメリカへ帰って行った。
いわゆる母子ものというか、産みの親より育ての親という内容なメロドラマチックな物語ですが、 見所はやはり、サイレント時代のスター女優、筑波 雪子 と 岡田 嘉子 の対決。期待以上に見応えがありました。 和装の似合う 筑波 と洋装もキマった 岡田 のコントラストも良し。 岡田 嘉子 の出演した戦前日本映画といえば、 小津 安二郎 『東京の女』 (松竹蒲田, 1933)、島津 保次郎 『隣の八重ちゃん』 (松竹蒲田, 1934)、小津 安二郎 『東京の宿』 (松竹蒲田, 1934) など 数は多くないものの何本か観てますが、 今まで観た中で 岡田 嘉子 を最も堪能できた映画でした。