舞台作品を収録した映像の上映を行う神奈川芸術劇場 KAAT の企画 KAAT de CINEMA 2017 の中から、 このビデオを観てきました。
フランス Centre National de la Danse のシネマテークによる1980年代フランスをテーマとした ダンス映像集。 画質も悪く、作品全体を捉えたものではなく短い抜粋も多く、YouTube や Vimeo の動画で観られるものも少なくないということは、 去年の Dance New Air での同様の上映 [レビュー] から予想が付いていたが、 上映会というきっかけが無いと集中して観る時間がなかなか取れないし、 大きな画面で見た方が細部が見易いので、足を運んだ。 さほど期待していなかったこともあるのか、セレクションが良かったのか、 Nouvelle danse française が興隆した1980年代のフランスのシーンの勢いと多様さが感じられ、 去年の Dance New Air の時よりも楽しめた。 以下、個別の作品について。
プロボクシングに着想した Régine Chopinot: KOK や、 見世物小屋的な Philippe Decouflé: Caramba では、 1980年代ならではのポップな完成度を持つキッチュさを楽しんだ。 Gustave Caillebotte の絵画に着想した Angelin Preljocaj: Les Raboteurs [YouTube] には後の映画監督としての活動につながるメタ映画的なセンスを見ることができた。 2015年にシャンソンで踊る可愛らしい舞台を見せてくれた Daniel Larrieu が ほとんどシンクロナイズドスイミングなWaterproof [YouTube のような作品を作っていたというのも、なんでもありの時代だったのだな、と。 Lili Boniche の歌うアラビア語のタンゴ “Ana El Owerka” に合わせて、 白黒コマ撮り (ピクシレーション) で撮影された動画 Pascan Baes: 49 Bis [YouTube] では、ヴィンテージ・フィルムを思わせるエキゾチックでノスタルジックな雰囲気が楽しめた。
Karine Saporta: La Fiancée aux Yeaux de Bois [YouTube] は母親の子供時代のロシアの農村の生活を伝える白黒フィルムに、それに着想したダンスを交えた作品。 Joseph Nadj にもつながる東欧的なマジックリアリズムを伺わせ、見た中で最も興味を惹かれた動画だった。 ジプシー音楽やクレツマーなど東欧のフォークに着想した音楽を手がけているのは Jean-Marc Zelwer。 Crammed Discs / Made To Measure からリリースされたアルバムは持っていたのだが、 その舞台の様子を知ることができたのも収穫。全編を通して観てみたい。